ニャート

出版社を過労で退職→ひきこもり→非正規雇用を経て、社会のあり方について思うことを書いています。

誹謗中傷でしか他人とつながれない|匿名掲示板という「負のつながり」の場

hagexさんの事件(福岡刺殺事件)で、容疑者ではないかと思われる、はてなで「低能先生」と呼ばれていたアカウントについて、荒らしの動機を推測した文章を読んだ。

低能先生はただ話がしたかったんだろうな|はてな匿名ダイアリー

※hagexさんの事件についての詳細はこちら
社会に居場所がない側から、hagexさんの事件を思う

話したいのに、罵倒しかできなかった

秋葉原の加藤も一緒だけど、自己肯定力の低さとかが邪魔して、世間をひねくれた目でみてしまうようになって、他人と普通の話なんてできなかった

俺は悪くない、おまえが悪いおまえが悪い、と罵倒しながら、目的は罵倒ではなくて他人と会話をすることだった

だから、低能先生は、話を振ると罵倒だけど答えてくれていたんだよね

低能先生がおかしくなったのは、その唯一の外界との接点である荒らしを奪われたことだったんだろう

端から見ると迷惑きわまりないが、あの罵詈雑言誹謗中傷は彼の唯一の外界と接するためのコミュニケーションだったのだ

上記については、こんな意見があった。

一方的に罵詈雑言投げつけられてるのに会話になんかなるわけねえだろ。本当に会話がしたかったのなら俺らじゃなくて自分が変わればいいのであってそれが出来なかったのを俺らのせいだって言われても困る

もっともな意見だ。
普通の人は、何の面識もないのに「低能」と罵倒してくる赤の他人につきあってはくれない。

「低能先生」と呼ばれていた人が会話できるようになるには

ここで、「低能先生」と呼ばれていた人(Aさん)の特徴について考えてみる。

  • 自己肯定力の低さなどのため、世間をひねくれた目で見てしまう
  • 他人と会話できないから、罵倒するしかなかった
  • 会話できるように変わりたくても、変わり方が分からなかった
  • 他人と接点を持てる場が、リアルでは少なかった

つまり、Aさんが他人とコミュニケーションを取れるようになるためには、下記が必要に思える。

  • 自己肯定力を高くする方法を学ぶ
  • 罵倒以外の、会話方法を学ぶ
  • ネット上でいいので、他人と接点を持てる場を複数持つ

だから、たくさんいるであろうAさんのような人の手助けをするには、下記をすればよいのではと思う。

  • 自己肯定力を高くする方法を紹介・サポート
  • 罵倒以外の会話方法を紹介・サポート
  • 会話に慣れない人のための、他人と接点を持てる場づくり・紹介・サポート

箇条書きにすると簡単に見えるが、これは大変だ。

たとえば、Aさんと私が会話するとする。

Aさんは罵倒しかできないので、私を罵倒してくるだろう。
それを上手く受けとめながら、Aさんのことを聞き出し、ほめて、少しずつ信頼を得る。
その中で、「こうするともっと会話が楽しくなるかも」と罵倒以外の受け答え方、会話の始め方などを紹介して、実践してみる。
会話ができるようになると、自己肯定力も上がってくる。
並行して、自己肯定力を上げるために、会話以外のこと(ひきこもりの人だったら、5分ずつ外に出る時間を増やしていくとか)もサポートして、日常生活に自信が持てるようにしていく。
慣れてきたら、ネット上で他人と接点を持てる場を紹介し、複数の人との会話を実践してみる……

1人のサポートならできるが、Aさんが100人いたら無理だ。
そもそも、こういったことを無料でやってくれる場は存在するのだろうか?

匿名掲示板での個人攻撃により、技術なしで得られる「承認」と「一体感」

Aさんを手助けするシステムの難しさを考えると、逆に実は、5ちゃんねるのような匿名掲示板が、システム的には巧みにできていることが見えてくる。

なぜ匿名掲示板で個人攻撃する人たちがいるのだろう、と考えると、Aさんのような人には、これだけのメリットがあるからだろう。

  • 匿名で書ける
  • 実名や半匿名で有名人などを攻撃すると、本人や「信者」から反撃されるが、匿名ならそれがない
  • 実名や半匿名では、議論ができないと負けるが、匿名なら、論旨と無関係な属性(容姿など)を誹謗中傷するだけでよい
  • 有名人は匿名掲示板など読まないが、それをよいことに「反論できない」と勝利宣言できる
  • 同じような匿名の誹謗中傷を支持することで、一体感が生まれる
  • 誹謗中傷や実力行使(自宅訪問など)が過激になるほど、支持される

最後の二つが重要である。

なぜ匿名掲示板での個人攻撃が過激化していくのかと言えば、そこに「承認」と「一体感」があるからだ。

誹謗中傷以外の「正のコミュニケーション」で承認と一体感を得るには、高い技術が必要である。

だが、誹謗中傷という「負のコミュニケーション」で承認と一体感を得るには、技術はいらない。

より過激になればいい。

その最たるものが、殺人なのかもしれない。

最後に

つまり、誹謗中傷という「負のコミュニケーション」は、実はパフォーマンスがよい。

それゆえ、「正のコミュニケーション」を身につける手間を惜しんで、そこに入り浸りになったまま抜け出せない人が出てくる。

Aさんのような人たちに「正のコミュニケーション」を身につけてもらうには、それをシステム的に上回る何かを提供する必要があるのかもしれない。

それは、私のような個人が何かしたいと思っても限界があり、公的な支援が必要ではないかと思う。
(でも、それはそれとして、私は自分ができることを見つけてやっていきたい)

(注:この記事は、匿名掲示板での個人攻撃を肯定するものではありません。否定して、より良い方法を模索したいがために書いたものです)

【追記】
これを書き終えた後に、容疑者が九州大文学部卒であることを知った。

IT講師殺害、九州大卒の容疑者「地味で真面目」

42歳(就職氷河期)・無職・ひきこもり、ラベリングはしたくないが、この事件は、非正規雇用の急増により社会に居場所をなくした、ロスジェネのリアルテロ的な、もっと社会的な問題なのかもしれない。
被害者・加害者ともにロスジェネだったことが悲しい。
このことはまた後日…。

【追記2】
私はこの事件を一生忘れません。

「はてな」という、自分の活動場所で起こった事件だからこそ、なぜこんなことが起こったのか、どうしたら防げるのか(未来形)を常に考え続けて、実践につなげたいのです。そういう覚悟で書いています。

しかし、この事件をブログで扱うかどうかは意見が分かれる所なので、批判を受けるのは覚悟しています。

事件の詳細
社会に居場所がない側から、hagexさんの事件を思う