ニャート

パニック障害で退職→ひきこもり→非正規雇用の氷河期世代。だめ人間が何とか日常を投げずに生きていくためのメモ書き。

中国経済を崩壊させた、給料5ヶ月分の借金をして株を買う個人投資家たち

2015年7月8日、中国経済のバブル崩壊の影響で、日本の株式市場が大幅に下落した。

中国のバブル経済を支えたのは、中国政府と個人投資家である。

このうち中国政府は、人民元下落を防ぐため、外貨準備高と米国債保有額を減らしてまで、人民元を買い支えた結果、資金がなくなったことは、下の記事で触れた。
中国経済は崩壊する? 5分で分かる中国バブル経済崩壊の理由

では、個人投資家の資金はどうなったのだろうか?

給料5ヶ月分の借金をして株を買う20代の若者

ここで、2015年4月時点の、中国のバブル経済における個人投資家の様子が分かる動画を見てみる。
中国 減速でも株高のワケ:ワールドビジネスサテライト

上海株は、この1年ほどで約2倍以上となった。
2,000円が5,000円になったのである。
そのため中国では、猫も杓子も靴磨きの少年も、株を買うブームとなった。

証券会社には、1,000万円以上を投資した個人投資家向けの「個人用トレーディングルーム」があり、定年退職後の高齢者たちが、弁当を持って通ってくる。
中国では、女性は50歳で定年退職となるので、おばさんの姿が目立つ。

煮しめたような色の服を着たおばさんたちが、1,000万円以上も投資できるほど金を持っている。
おばさんたちが大挙して株を買い、銘柄すべてストップ高になる画面を見て、こんなバブル状態が長く続くわけがないと確信した。

2015年春、中国の個人投資家数は1億人を突破していた。
日本では、株式市場における個人投資家の割合は3割だが、中国は6~8割を占める。
つまり、ほぼ個人と言ってもいい。

そして、新たに口座を開設する人の多くは、大学を出たばかりの若者である。

2014年秋から株式投資を始めた、銀行に勤める2人組の若者は、グループチャットなどで勧められた株を買う。
業績は調べない。
それでも、一人は57万円が158万円になった。

もう一人は1ヶ月で38万円が50万円になったが、元手の38万円は何とクレジットカードでキャッシングしたお金だという。
ちなみに、彼の月給は76,000円なので、給料5ヶ月分以上の借金となる。
バブルが弾けて、5,000円だった株が3,500円になった今、彼は借金を返せるのだろうか。

株式の信用取引は借金である

先ほどの若者は、クレジットカードでキャッシングをしていたが、それ以外にも株式投資用の資金を借りる方法がある。

1つは、信用取引である。

これは簡単にいうと、現金や株式を担保にして、その3倍分の株式取引をすることである。
つまり、100万を保証金として証券会社に預けることで、300万分の取引ができるようになる。

また、その300万で株を買い、株価が下落して270万円になった場合、保証金維持率が25%を割るため、追証(おいしょう。追加の保証金のこと)が発生する。
期限までに追証を入金して、保証金維持率を30%以上に回復しないと、自動的に株が売られ、損が確定してしまうのだ。

中国には追証はないが、保証金に対して損失額の比率が大きくなれば、やはり自動的に株が売られるのは同じである。

だが、中国の信用取引は、条件が厳しい。
最低でも、株取引歴が半年あり、約1,000万円の資産がないと利用できない。
それでも、中国の証券会社が、信用取引を行う個人投資家に融資している金額は約42兆円と巨大である。

見知らぬ他人がお金を貸し借りできる仕組みとは

では、信用取引を利用できない個人投資家は、どこから金を借りるのか。

それが、「P2P(ピアツーピア)レンディング」「P2P融資」と呼ばれる、オンライン融資サイトである。
日本では、ソーシャルレンディングと呼ばれている。

P2Pレンディングとは、融資サイトを通じて、お金を貸したい人がお金を借りたい人に貸すことができる融資手法である。

日本でよく知られているクラウドファンディングは、P2Pレンディングの一つであるが、お金を出す人はそれほど見返りを求めていないことが多い。
対して、P2Pレンディングは、お金を貸す人は、貸すことで年利○%儲けることを目当てに融資する点が大きくちがう。

下の記事から、P2P融資について引用する。
利息22%で借りて株式投資も-中国の信用取引、綱渡りの実態 - Bloomberg

チャンさんは証券会社から信用取引向け融資を受ける場合は、自己資金の3倍が上限だが、P2Pサイトでは5倍まで借りられると語る。P2P融資が抱えるリスクの一つは利息だ。P2Pサイト融資の利息は通常、1ヶ月当たり最高1.7%、年率では22%余りと、証券会社が一般的に要求する利息の約3倍となっている。

つまり、P2P融資を利用すると、証券会社の信用取引よりも多くの金額が借りられるが、その分高金利ということだ。

中国のP2Pレンディングサイトの例を、一つ挙げておく。
http://www.daidaicn.com/

年利13.5%で300,000元を3ヶ月融資などなど、融資物件が並んでいる。
P2P融資サイトはたくさんあるが、どこのサイトでも「100%本金保障計画」などと書いてある。
サイト側が借りる人の審査を行い、担保を確保し、返済が遅れた時にはサイト側の準備金から、貸した人に資金を返済する仕組みになっているようだ。

※P2Pレンディングは、日本ではソーシャルレンディングと呼ばれているが、代表的なものとして「maneo」がある。
ソーシャルレンディング | maneo(マネオ) | あなたの投資が中小企業をサポート!!

といっても、中国のP2P融資サイトとはちがい、株を買いたい人のためにお金を貸す仕組みなどではなく、下記を扱っている。

maneoが取り扱うのは、不動産の取得資金、分譲住宅建設費用、飲食店フランチャイズの開業資金、治療院の短期ローンなど、事業性資金のみです。

まとめ

当然気になるのは、中国バブル経済崩壊で、高金利で借金してまで株を買っていた個人投資家たちはどうなるのだろうか、ということである。

中国政府が、7月8日時点で1429社の株取引の売買を停止し、市場の約40%の株を凍結しても、凍結された株価は下がらないかもしれないが、売れもしない。
だが、期日が来れば、借金を返さなくてはならない。
そして、凍結解除後(解除されるかどうか不明だが)は、当然株価は下がるだろう。

金を返せなければ、貸主も困る。
そのように循環して、経済は崩壊していく。

この中国バブル経済崩壊が、日本にどのような影響をもたらすかは、もう少し見届けたい。

中国経済は崩壊する? 5分で分かる中国バブル経済崩壊の理由