ニャート

パニック障害で退職→ひきこもり→非正規雇用の氷河期世代。だめ人間が何とか日常を投げずに生きていくためのメモ書き。

社畜の洗脳。「日本人は決して働きすぎではない」への反論

「祝日数・有給休暇数と有休消化率・平均労働時間を総合的にアメリカと比較すると、日本人は決して働き過ぎではない」という記事を読んだ。

マスコミの洗脳。日本人は決して働きすぎではない - 名誉社畜ブログ

結論から言うと、日本人はやっぱり働き過ぎだと思うので、上記の記事と同じ観点から各数字を見ていきたい。

日本の祝日数:外国との比較

日本の祝日数は15日で、確かに世界3位だ(2013年度調査)。
アメリカは10日で、9位である。

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マーサー、年間祝祭日数世界ランキングを発表 - プレスルーム | マーサージャパン

だが、データから見ると、同率が多い。
10位までに、59国も入っている。

さらに日本では、祝日が休みではない会社も多い

祝日数+有給休暇数の海外比較

では、祝日数(公休日)と有給休暇数の合計数を比べてみよう。

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Americans Receive Half The Amount Of Vacation Time Of Russians | Hotels.com Press Room

日本は世界20位、アメリカは25位と、どちらも低い順位である(2013年度調査)。

日本の有給休暇数が10日なのは、勤務初年度に取得できる有休数で集計されているからだ。

日本は祝日数は多いが、有休数が少ないので、合計した休暇日数では調査対象30国中でも下位になる。

日本の有休消化率:外国との比較

その少ない有給休暇の取得率はどうだろう。

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有休消化率2年連続下から2位!有給休暇国際比較調査2015│エクスペディア

上記のグラフにはドイツが入っていないので、2012年の結果も貼っておく。

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日本人は休みベタ?有給休暇国際比較調査2012|エクスペディア

ブラジル・フランス・スペインは、30日中30日消化できているのに対して、日本は20日中12日消化(60%)と低い値である。

アメリカも15日中11日消化(73%)と、実際に休んでいる日は、日本12日アメリカ11日と、低いレベルで大して変わらない。

実は、2016年4月から厚生労働省は、企業に社員の年5日分の有休消化義務を課す。

企業の有給消化義務 「5日」で調整へ どんな意味があるのか? 労働政策研究・研修機構研究員 高見具広 (THE PAGE) - Yahoo!ニュース

理由は、政府が2020年までに有休取得率を70%に引き上げる目標を掲げているからだ。
そのため、少しは有休消化がしやすくなるかもしれないが、ブラック企業などでこの制度が本当に守られるのかは疑問である。

日本には病気休暇がない

さらに欧米には、何と「病気休暇」がある。

病気休暇とは、「有給休暇とは別に」純粋に病気のための休暇のことである。
有休数と同日程度支給され、有休のように給料も支給される(詳細は国によって異なる)。
制度がない国の方が珍しく、先進諸国には大抵ある。

私はこの制度を知った時、日本に生まれたことを激しく呪ったものだ。
日本では、例えばインフルエンザにかかったら、それだけで有休の半分が消えてしまう(10日中5日の計算)。
だが外国なら、病気休暇を使って給料をもらいつつゆっくり休め、さらに有休はそのまま残せるのだ。
私自身も、病気でしか有休を使ったことがない(念のため言うが、これは社畜自慢ではなく呪いである)。

正直、祝日数+有休休暇数+病気休暇数で調査したら、日本は最下位に近い順位になるのではないだろうか
有休消化率にも、病気で消化分が含まれているだろうし。

で、日本には病気休暇はないと思っていたが、どうやら公務員にはあるらしい…。

病気休暇 - Wikipedia

日本人の平均労働時間と残業時間:外国との比較

では、日本人の平均労働時間を見てみたい。

working_hour_2014

http://stats.oecd.org/

上記は、OECDによる2014年の平均年間労働時間の調査結果で、日本は15位である。

だが、とても大事なことだが、この結果には「サービス残業時間数」が含まれていない

当然だが、サービス残業時間数の公式データはない。
だが、少な目の参考値なら、総務省「労働力調査」から推計できる。
「労働力調査」は労働者が答えた数値のため、OECDの調査が元にしている厚生労働省「毎月勤労統計」(事業者が答えた数値)よりも、実情に近い数値が出る。
(だが、「労働力調査」さえ労働者が少な目に回答している可能性は大いにある)

2014年「労働力調査」による平均週間就業時間は39.1時間、年52週で計算すると、39.1×52=2033時間となる。

統計表一覧 政府統計の総合窓口 GL08020103

この労働時間数だと、日本は少なくとも世界5位となる。

※追記:言及いただいた下の記事では、2014年のOECD調査で日本の男性労働時間は26ヶ国中で世界1位と紹介されています。データの見方が参考になります。私は、比較のため冒頭記事と同じデータ+労働力調査を使いました。
「日本の労働時間は世界15位と低い」の謎を解く - 文章生成ファクトリー

まとめ

日本の、統計値と実情の乖離について、海外掲示板の反応を引用する。

  • 日本は数字を偽ってる…。長時間働いてて給料をもらってるのは確かだけど、実際の労働時間はそれよりもさらに長い
  • まさにこれを言いに来た。アメリカと日本でそれぞれ複数の企業で働いたことがあるけど、日本人は給料が発生しない残業をしまくっていた。あれはとんでもない
  • 日本人は文字通り絶滅の道を歩んでるからね。ほとんどの職業は余暇すら持てない、子育てなんて言うまでもなく出来ない
  • 自分の時間を持てないってことこそ日本がゆっくりと衰退してる理由じゃないか
  • 労働時間が長い=誇らしいことでは無いのにな
  • 残念ながらアメリカ人は人生とは仕事で定義されるものという馬鹿な考え持っているし、仕事をしていなかったら無価値だと思っている。他の国よりも労働者の扱われ方が酷いからさらにアホになっていく

海外「日本は数字を偽ってる…」 アメリカ人の労働時間が日本人を超えた事実に対する海外の反応 : 海外の万国反応記

冒頭のブログ主は、アメリカ人の同僚が身近だから、日本とアメリカを比べたのだろうが、両国とも他国に比べると労働環境は悪く、どんぐりの背比べにしかならない。

そもそも、日本はアメリカを目指したせいで、現在の雇用体制が崩壊を迎えつつある(と私は思っている)。それでもなお、悪い国を見習うのか。

日本人が働いていないと言いたいわけではありません。

そんな私も月120時間は残業しています。

いわゆる過労死ラインは軽く突破しています。

マスコミの洗脳。日本人は決して働きすぎではない - 名誉社畜ブログ

「名誉社畜」という名にふさわしい、残業時間自慢。

なぜ、社畜は労働時間の多さを誇りたがるのか。
それだけ重要な仕事を任せられているという自負なのだろうが、ヨーロッパでは「時間内に仕事を終えることができない無能」と見られることも多い。
そろそろ、アメリカ基準で物事を考えることから、日本全体が卒業していきたいものだ。