ニャート

旧「一橋を出てニートになりました」。出版社を過労で退職→引きこもり→派遣社員を経て、働き方や社会のあり方について思うことを書いています。

東大を2留して、レールを外れたと思っているこうさんへ

「『レールから外れたら人生終了』という日本に蔓延る神話が皆を不幸にしている」というtogetterを読んだ。

これは、「東大を2回も留年した人のブログ」を書いている「こう」さんのセルフまとめだ。
こうさんは、東大2年生(4回生・2留)である。

こうさんのこれまで

こうさんは、

ぼっちで趣味がないことから、受験勉強に熱中

東大合格で燃え尽き、必修授業以外は出なくなる

コミュ障だが、頑張ってテニスサークルに入る
しかし、白内障のため5月末まで活動に参加できず

「進振り」により、2年生の秋に経済学部へ進学
クラスが無くなったことでクラスメイトの「シケプリ」に頼れなくなり、試験対策できなくなる
コミュ障のため、誰にも助けを求められず

ネトウヨ活動にのめり込む

経済学部の勉強が全く分からない
再度「進振り」を受けて学部変更するために、試験を受けずに留年

留年と学部変更を親に納得させることができず、再び経済学部へ進む

FXにのめり込んで大損

2回目の留年。今度は親も学部変更を受け入れる

サークルの同期の起業を手伝う

自らの付加価値を「東大生」「留年」「コミュ障」に設定し、TV出演を目指す Now!

という流れを経ている。

東大で2回も留年した話(前編)

ちなみに、冒頭でセルフまとめされていたレール関連の記事には、私の寄稿記事が紹介されていて、それで親近感を抱いた。 www.onecareer.jp

私は最初、こうさんが「2留したから官僚になるのは難しい」など、東大出身者独特のレールを外れたことを嘆いているのかと思ったのだが、そうではなかった。

レールの外れ方には、積極的・消極的の2パターンがある

私は、20代がいわゆる「新卒カード」を捨てることについて、いまだ、どうアドバイスするか態度を決めかねている。

レールの外れ方には、「外れたいから外れる」積極的なパターンと、「外れざるを得なかった」消極的なパターンがある。

やりたいことがあって新卒カードを捨てる場合は、(そのやりたいことが具体的でなくても)私は応援するようにしている。
なぜなら、今の20代前半は超売り手市場であり、失敗してもいくらでもやり直し可能だからだ。

しかし、こうさんの場合、やりたいことがあって留年したのではなく、留年せざるを得なかった状況だと思う。

消極的に外れたのに、その理由を直視せず、個性として売り出そうとしている。

本当にやりたいことがある人の場合、中退という道もあるが、こうさんが何をやりたいのかは「有名になる」以外は分からない。
このまま学業から逃げていると、3度目の留年を迎えてしまうのではないか……?

2度の留年=レールを外れた、とは私は全く思わない。
むしろ、有名ブロガーを目指して、また留年することの方が、ずっと危うい。
今から真面目に学業と就活に取り組めば、何の問題もないのに。

今のこうさんに必要なこと

今のこうさんに本当に必要なことは、下記だと思う。

  1. 大学の授業に毎回出席し、内容を理解すること
  2. 相談できる人や居場所を作ること

1:大学の授業に毎回出席し、内容を理解すること

なんといっても、「大学の授業に毎回出席し、内容を理解すること」が最大優先である。

こうさんのブログには、留年決定後に勉強を頑張ったという記述がない。

ネトウヨ活動やFXなどに逃避し、2回目の留年後も、サークル同期の起業を手伝ったり、インターンに行ったり(この2つ自体は良いことだが)、今またブログを書いたりしている。

次に絶対進級できる余裕があるなら、課外活動を行ってもよいが、はたして本当に進級できるのか?
受験勉強の燃え尽き症候群で、勉強をしたくないという気持ちは分かるが、現在の自分の状況を冷静に把握した方がいい。

2:相談できる人や居場所を作ること

こうさんは、コミュ障だけど可愛い女の子に出会いたくてテニスサークルに入ったが、そこで居場所は築けたのだろうか。
完全ぼっちではない、とのことだが、もし居場所が築けていたら、「シケプリ」に似たものをサークル経由で入手でき、留年はしなかったと思うのだ。

日本一有名なニートであるphaさんにとっての京大熊野寮のような場所が、こうさんにもあるとよいなあと思う。
(熊野寮で留年する人は多いが、こうさんのように、孤立して留年するのはつらいと思うので)

つまり、「コミュ障でも受け入れてもらえる居場所」だ。

また、これまでの経緯を、理解ある大人に相談した方がよいと思う。
東大には、京大の学生総合支援センターのように、理解ある相談先はないのだろうか。
(私でよければ、twitterでDMください。返信はすっごい遅いですが……)

学生さんへ 留年について|京都大学

あと、4回生ということなので、同期の就活状況をできるだけたくさん聞いておいた方がいい。
起業するにしても、一般企業で働くことは大きな経験になるので、いろいろな選択肢を意識して残しておいた方がいい。

中退について

「大学での勉強には意味がない」と思う程度なら、中退は絶対しない方がいい。
どうしても勉強したくないなら、いろんな人に相談して、要領よく試験を乗り切れる方法を探してほしい。

ただ、「本当に、どうしてもどうしても、勉強についていけない」ということはあり得ると思う。
その状態であっても、下記を満たすまでは中退しない方がいい。

  • 勉強についていけない場合は、学生課などに相談する
  • 中退して何をやりたいか、具体的なプランを作る
  • そのプランで、親を含む周りの人を納得させることができる
  • 実際に、東大中退した人の話を「会って」聞く

こうさんはレールから外れていないし、まだ乗ってもいない

こうさんは、留年したことがつらくて、それを「個性」として積極的に売り出すことを考えたのかもしれない。

だけど、こうさんは、レールから外れていない。まだ乗ってもいない。

出版社に入社後、過労で精神疾患になり、いまは辛うじてフルタイム派遣で働けているけど体力気力がなくて毎日ギリギリで生きている私(もし体力があっても年齢的に正規雇用は絶望)から見れば、うらやましいほどの可能性に満ちあふれている。

日本社会におけるレール神話が持つ、真の選別基準は「年齢」であって、その点では、こうさんは圧倒的な勝ち組のままなので、安心してほしい。

コミュ障はつらいだろうけど、既にインターンで働けているなら、標準以上のコミュ能力を身につけなくても、ちょっと下くらいで余裕で生きていける。

コミュ障でも働きやすい企業や職種について人よりも熱心に情報収集し、自分に合った企業や働き方(プロブロガー以外)にめぐりあってほしい。

(メンヘラ.jpのわかり手さんが言った、「フリーライターの世界ってのはパラリンピック」はその通りで、アフィリエイト以外のブロガーで有名になるのを目指すことは、「普通」に生きられない人の最後の砦だと、私は思っている。もちろん、趣味で書く場合は何の問題もない)

追記

23日16時追記・21時変更(短くした):こうさんとtwitterで話をした。

こうさんは、前期課程の単位は取得済。学部変更のために2度留年したため、秋の後期課程から頑張ればよく、それまではブログ活動ができるとのこと。現時点では中退は考えていないらしく、良かった。

あと、「『テレビ出演』がこのブログの目標だ」で、こうさんは「テレビ出演を果たしたら実名での活動に切り替えようかとも思っている」と書いているが、売り出し方をよく考えないと、実名でのTV出演は就活でマイナスになるかもしれない。

新卒プロブロガーが、各企業の人事部にブラックリスト化されているという噂がある。バカバカしいし、そういう話は大嫌いだが、「新卒カード」は残しておいた方がいい。

おまけ:
同じ東大生ブロガーに、東大生の1日を50円で売っている高野りょーすけ氏がいる。
高野りょーすけとブログ

「現役東大生が1日を50円で売ってみたら」を出版している。留年している。彼のように、純粋な企画の面白さで売り出せるのなら、実名顔出しもプラスになるのかも……。

現役東大生が1日を50円で売ってみたら

現役東大生が1日を50円で売ってみたら