ニャート

パニック障害で退職→ひきこもり→非正規雇用の氷河期世代。だめ人間が何とか日常を投げずに生きていくためのメモ書き。

妻が夫との行為を拒む理由|渡辺ペコ「1122」

新刊マンガ、渡辺ペコ「1122」(いいふうふ)1巻は、結婚7年目の仲良し・子なし・セックスレス夫婦が「婚外恋愛許可制(公認不倫)」を選択したという話。

とても面白いのだが、連載中のため、どこまであらすじにふれていいか分からないので、「1122」を読んで私が連想したことを書きたい。


日本家族計画協会「男女の生活と意識に関する調査」によると、セックスレス夫婦の割合は全体の47.2%(2016年)で、夫の理由は「仕事で疲れている」「家族のように思える」「出産後何となく」、妻の理由は「面倒くさい」「出産後何となく」「仕事で疲れている」である。

女性にとって、自身の性欲(以下『欲求』)が強いか弱いかで、結婚の意味は全くちがってくると思う。

私の観測範囲では、男性よりも欲求が強い女性もいれば、全く欲求がない女性もいて、個人差が激しい。
どっちが多いのかは分からない。

妻側の理由1位は「面倒くさい」だが、ここに隠されている、言語化できない本当の理由について考えてみる。

男性が求めるタイミングに合わせて、欲求を出せない

私は20代のとき、朝も昼も夜も土日も盆も年末も働いていた。
そのため、もともと欲求が弱いこともあり、疲れていて、恋人と会っているときに、タイミングよく欲求を出せないことで悩んでいた。

欲求は弱いけど、ないわけではないのだ。
だから、たまに土日に仕事がなかったとき、土曜日は一日寝て、日曜日の午前中に長風呂して、からだがあったまってひとごこちついたときに、「あれ、ずっと忘れてたけど、なんかもやもやするかも…」という気持ちになることはあった。

でも、恋人と会っているときに、その状態をタイミングよく出せないのである。
疲れを取って、一人でリラックスして…、というステップを踏んで、やっとぽわんと出てくる(そしてすぐ消える)ものだった。

働く主婦は忙しすぎる。
現在の労働環境は、男性の体力を基準にして設計されているので、週5日×8時間の定時上がりでも、女性の体力的にはけっこうつらい。
その上、帰っても家事やら姑やら、子どもがいれば育児やら、ずっと動きっぱなしで、リラックスできるのっていつなのと思う。
それで、疲れて布団に入って、タイミングよく欲求を出せるかというと、私だったら絶対無理なんである。

10代でタブーだったものを、妊娠適齢期にいきなり出せない

また、女性は10代のときに、(妊娠しないように)自身の欲求に「気づく」ことを厳しく禁じられていることも、大きな影響を与えていると思う。

そのため、欲求が弱いと、自分の欲求を肯定的にとらえ、そういう行為が楽しく後ろめたくないものだと再認識することが難しい。

だから、妊娠適齢期になったからといって、今までタブーだったものを、男性が求めるタイミングに合わせてパッと出せるかというと、欲求が弱い場合は無理なんである。

特に、現代的な暮らしにおいて、「動物」にならないとできないことって、性行為だけだと思う。
欲求が弱いと、その恥ずかしさや後ろめたさ、非日常感(いつもの自分を失うこと)を乗りこえられない。

さっきまでマンションのローンだの子どもの保育園道具に名前づけが必要だのという話をしていて、明日は5時に起きてお弁当を作らないといけない。
そのあいだの細切れ時間に、いきなり動物になって非日常に「切りかえ」できるかというと、私だったら無理なんである。

「○歳までに妊娠しないと」という脅し

さて、欲求が弱い女性も、そういう行為に向き合うことを必要とされるタイミングがある。
妊娠・出産である。

「1122」の中に、こんなシーンがある。

「まだってあなたそろそろ急がないと」
「産んで子宮を使わないと」
「女性のエネルギーは陰に傾くのよ」

そういう欲求が弱い女性の10~30代を、時系列でみるとこうなる気がする。

10代~20代前半:「セックスしちゃダメ」
20代後半~  :「疲れてセックスできない」
30代~    :「妊娠のためにセックスしないと!」

妊娠適齢期であろう20代前半は、大学生~社会人3年目くらいにあたり、出産するのは難しい。

大学生のときは、親に禁止される。
社会人になりたてのときは、会社に禁止される。
20代後半は仕事が忙しく、あっという間に30代になり、「羊水腐ってる」(実際は腐らない)「なんで20代で産まなかったの?」と言われるようになる。

女性にとって、性行為というのは、単体での良さを語られる場がほとんどないと思う。
若いころは禁止、適齢期を過ぎると(それまでに産めていなければ)脅しや自己否定という、マイナスな感情とセットになっている気がする。

性行為自体がよいものだと知らずに死んでいく女性は、それなりにいるんではないかな、私もだけど。


こうしたいろんな事情が言語化できなくて、夫婦間の営みがない妻側の理由1位が「面倒くさい」になっているのではないかと思う。

これはあくまで、欲求が弱い私の推察なので、欲求が強い女性の意見も聞いてみたい。
たぶん、そういう欲求が強いか弱いかで、全くちがう気がする。


「1122」の主人公・いちこ(35歳)も、性欲は「凪」(無風=なし)のようであり、1年くらいしていない。
夫をだれより信頼しているのに、いや、信頼しているから、「婚外恋愛許可制」をとっている。
いちこは「セックスくらいいいじゃん」(行為がなくても関係や信頼はゆるがない)と思っても、夫はそうではなく、体のつながりを外注している相手に夢中になっていく。

他にも、いちこの毒親や、夫の(ダブル)不倫相手が抱える事情(子どもの発達遅延やDVがありそうな夫)など、今後の展開から目を離せない。
(小ネタだけど、発言小町とはてな匿名ダイアリーも出てくるよ)

1122(1) (モーニング KC)

1122(1) (モーニング KC)

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