30代・40代でも「終活」をやっておきたい人は、実は多いのではないか。
しかも、30代の終活によくある「折り返し地点で人生を振り返り、新たな活力とする」という前向きな意味ではなく、もっと後ろ向きな意味で。
この記事では、終活では避けて通れない、でもやりたくない自分の「葬式」について、
- 葬式をやらないと違法なのか
- 最も安い「直葬」とその流れ
- 直葬プランの各社費用と最安値
- 直葬・火葬式を選ぶときに絶対注意したいこと
- 直葬プランのクレームが多い理由
について解説する。
(注.いつもの読者様へ:これは「働けない人に役立つ知識シリーズ」ではなく、私の興味のまま突っ走る「アラフォー終活シリーズ」です)
友達がいないから、葬式はやりたくない
私は精神疾患になってから、友達との交流を断ってしまった。
で、気になるのが、もし親より早く死んでしまったら、親は普通の葬式をしてくれるのではないか、ということだ。
死んでからまで、友達がいないことで恥をかきたくない。
だから、葬式はやりたくない。
やらずに済ますことができないなら、できるだけ規模を小さくしたい。
葬式はやらないと違法なの?
そもそも、葬式をやらないと違法になるのだろうか?
調べたが、葬式を義務づけている法律はない。
(死亡届については、出さないと戸籍法第86条によって違法になる)
葬式はやらなくてOKでも、「墓地,埋葬等に関する法律」(墓埋法)第9条によると、死体の埋葬・火葬は行わないとならない(だから、身寄りのない人は市町村が行う)。
第9条 死体の埋葬又は火葬を行う者がないとき又は判明しないときは、死亡地の市町村長が、これを行わなければならない。
その他、「死後24時間たたないと埋葬・火葬できない」「埋葬(土葬)は墓地のみ・火葬は火葬場のみ」「埋葬・火葬には市町村の許可がいる」などがある。
日本では火葬以外はできない?
脱線するが、日本では火葬しかできないのだろうか。
例えば、土葬。先ほどの墓埋法には、土葬禁止とは書いていない。
ただし、東京都や大阪府などの都道府県は、条例で土葬を禁止している。
そうした条例がない都道府県でも、市町村などが経営している墓地には、土葬を受け入れないなどのルールが定められており、現状難しいとのこと。
鳥葬や風葬なども、墓埋法では禁止されてはいない。
ただし、鳥葬や風葬は、刑法第190条の死体損壊になる可能性があるようだ。
水葬は、船員法第15条により、航行中に船の中で亡くなった場合、いくつかの条件を満たせば可能である。
火葬だけしたいなら「直葬」
とにかく、火葬はしないとならないようだ。
では、最低限の料金で火葬をしたい。その場合は「直葬」になる。
直葬(ちょくそう)とは、「通夜・告別式などの儀式は行わず、自宅または病院から直接火葬場に遺体を運び、火葬にする方式」という意味だ。
「火葬式」という言葉もあるが、(あとで説明するが)葬儀仲介会社が提供するサービス内容に違いを設けているだけで、意味としては「直葬」とほぼ同じである
直葬の割合だが、2013年のNHK調査によると、関東では5件に1件が直葬となっていて、近年は増えてきている。
直葬や火葬式の流れ
直葬や火葬式は、下記の流れで行われる。
臨終
・病院で亡くなった場合は、医師から「死亡診断書」が発行される
・自宅で亡くなった場合は、警察による検視が行われることがある
↓
搬送
・安置場所を決め、遺体を運ぶ
↓
安置
・墓埋法により24時間は火葬できないので安置
↓
納棺
・遺体を棺に入れる
↓
出棺
・火葬場へ出発
↓
火葬
・焼く
↓
収骨(拾骨・骨上げ)
・火葬後に、遺骨を骨壷に納める
直葬と一般的な葬儀との流れの違いは、下記になる。
- 「納棺」と「出棺」の間に、「通夜」「告別式」がない
- 直葬では、お経をあげない
直葬の費用はどのくらいかかるのか
では、最も安い「直葬」の費用は、どのくらいかかるのか。
大手3社「小さなお葬式」「イオン」「よりそう」の、直葬プラン・火葬式プラン価格比較
直葬をするなら、(自分でやる以外は)葬儀会社か葬儀仲介サービスに頼むことになるだろう。
ここでは、葬儀仲介サービス大手3社における、直葬プランの価格を挙げる。
【小さなお葬式】
小さなお別れ葬セットプラン:140,000円
小さな火葬式セットプラン:188,000円
【イオン】
火葬式:194,400円
【よりそう】
直葬プラン:128,000円
火葬式(仏式)プラン:173,000円
(※すべて税込・資料請求による割引価格)
以下、便宜的に下記のように呼ぶことにする。
『直葬プラン』:小さなお葬式「小さなお別れ葬」・よりそう「直葬プラン」
『火葬式プラン』:小さなお葬式「小さな火葬式」・イオン「火葬式」・よりそう「火葬式(仏式)」
上記だと、『直葬プラン』の最安値は128,000円になるが、『直葬プラン』には本当の最小限しか含まれないのだということを説明していく。
『直葬プラン』に含まれるもの
「小さなお葬式」「よりそう」共通で『直葬プラン』に含まれるものは下記になる。
- 棺
- 仏衣一式
- 棺用布団
- ドライアイス
- 骨壷・骨箱
- 役所や火葬場の手続き代行
- 寝台車による搬送2回(病院〜安置場所/安置場所〜火葬場)※1
- 地元の葬儀社による「預かり安置」(「自宅安置」不可・面会不可)
- 火葬料金※2
- 運営スタッフ
※1:距離には上限があり、超えるとプラス料金
※2:公営火葬場がない地域(東京23区など)等はプラス料金
これを見て、「本当に最小限しか入っていないんだな」と認識しておかないと、後でクレームのもとになるだろう。
『火葬式プラン』に含まれるもの
「小さなお葬式」「イオン」「よりそう」共通で『火葬式プラン』に含まれるものは、『直葬プラン』の内容に、
- 「自宅安置」「預かり安置」の選択
- 仏具など(枕飾り一式・自宅飾り一式)
が追加される(仏具の内容は各社異なる)。
『直葬プラン』『火葬式プラン』を選ぶときに絶対注意したいこと
こうした、最小限の『直葬プラン』『火葬式プラン』を選ぶときに、絶対注意したいことを2点挙げる。
『直葬プラン』『火葬式プラン』は「付き添い安置」ではない
最も注意したいのは、『直葬プラン』だと、地元の葬儀会社による「預かり安置」しか選べないため、安置中にご遺体と一緒にいることはできず、線香すらあげられないことだ。
『火葬式プラン』にグレードアップして、やっと「預かり安置」と「自宅安置」が選べるようになる。
つまり、24時間の安置中に、ご遺体に付き添いたい場合は、最低でも『火葬式プラン』を選ぶ必要があるということだ。
さらに、自宅に安置できないがご遺体に付き添いたい場合は、「付き添い安置」を選ぶ必要があるが、『直葬プラン』『火葬式プラン』は対応していない。
例えば、小さなお葬式の場合、「付き添い安置」を選ぶと1日あたり+50,000円になる。
ふつう「最低限のお葬式」を想定するとき、その「最低限」という定義の中には、「ご遺体への付き添い」も入っているだろう。
しかし、「ご遺体への付き添い」は、実は、現状の「最低限のお葬式」には含まれていないことに注意したい。
『直葬プラン』『火葬式プラン』ではお経は読まない
また、『直葬プラン』『火葬式プラン』には、読経が入っていないことに注意したい。
イオンの「火葬式」では、+45,000円で炉前読経・戒名授与ができる。
小さなお葬式の「小さな火葬式」では、読経の時間は確保できるが、お坊さんを呼ぶ費用はプラス料金になる。
『直葬プラン』『火葬式プラン』のクレームが多い理由
このように、『直葬プラン』の内容と、一般的に思い浮かべる「最低限のお葬式」の内容にはギャップがある。
『直葬プラン』などを提供している葬儀仲介サービスをネットで検索すると、クレームが多く出てくるのは、理由が2つ挙げられる。
- 一般的に思い浮かべる「最低限のお葬式」と、『直葬プラン』の内容にギャップがあり、消費者が「こんなものも入っていないとは…」と驚くため
- 『直葬プラン』の提供会社は葬儀仲介サービスであり、実際に地元で葬儀を担当した葬儀会社がイマイチだと、葬儀会社へのクレーム=葬儀仲介サービスへのクレームとなる
『直葬プラン』を提供しているのは葬儀会社ではない
2つ目の理由だが、低価格の『直葬プラン』『火葬式プラン』を提供しているのは、葬儀会社ではなく、葬儀仲介サービスである。
つまり、自社で葬儀を行うのではなく、全国で契約している葬儀会社を紹介しているだけなのだ。
口コミを見ていると、「葬儀仲介サービス会社の評価=実際に地元で担当した葬儀会社の評価」となっている。
つまり、葬儀仲介サービスに頼んで上手くいくかどうかは、地元でどんな葬儀会社を紹介されたか、に左右されている。
それなら、一番良いのは「最初から、自分で地元の葬儀会社を探すこと」ではないだろうか。
自分の葬式を直葬にしたい場合、遺言を書いておこう
さて、自分の葬式は直葬にしたい場合、アラフォー終活において、すべきこととは何だろうか?
直葬プランを頼む場合、口コミを見る限り、頼んだ人にストレスがかかることが分かった。
だから、家族に迷惑がかからないように、私は次のことをやっておきたい。
- 直葬ができる地元の葬儀会社を、自分で探しておく
- 「付き添い安置」が必要か、家族に確認を取る。必要なら、付き添い安置をできるだけ安く済ませる方法を探しておく
- 遺言に、葬儀会社・プラン名・直葬の流れ・見積もり・付き添い安置をどうするかなどについて、事細かに指定しておく
- 葬儀費用を貯金して、口座に残しておく
うーん、タヒぬのも大変なんだなあ。
(実は、葬儀終了後に手続きをすれば、国民健康保険などから受け取れる給付金がある。その話はまたいつか。シリーズ次回は「散骨」の予定。その前に、ひきこもり新聞10月号の紹介記事を書きたい…)
「ひきこもり新聞」2018年10月号の2面に、寄稿させていただきました。