ドラえもんは子ども向け漫画というイメージがあるが、もともとSFに分類され、怖い話や不思議な話、不条理な話もたくさんある。
ドラえもんのあっさりした絵柄で、淡々と怖い話を語られると、ツボにはまると非常に怖いことがある。
今回は、おすすめの本当に怖い話20作を厳選してみた。
並びは、コミックス発売順。
影に乗っ取られる「かげがり」
パパから雑用を頼まれたのび太。
ドラえもんは「影切りばさみ」で、のび太の影を切り取る。
影はのび太から離れて動き出し、雑用をやり始めた。
ドラえもんはのび太に、30分たったら影をくっつけるよう忠告する。
だが、他にも雑用をやらせているうちに、30分が経過する。
すると、影は意識を持ち始め、話せるようになっていく。
同時に、のび太は次第に黒くなり、影のようになっていく……。
(てんとう虫コミックス1巻)
影に本体が乗っ取られる。
初めは従順だった影が、意識を持ち、本体を乗っ取るため自分の意志で動き出すところや、本体(のび太)が次第に黒くなり、影に近づいていくところがかなり怖い。
影が白い目でニヤリと笑ったり、「モウスグ入レ替ワレルゾ」と声を発するシーンにはゾッとする。
作用が本体に伝わる人形「のろいのカメラ」
のび太をいじめたスネ夫にドラえもんは怒り、「のろいのカメラ」で仕返ししようとする。
しかし、その道具の恐ろしさに仕返しをためらい、つい居眠りしてしまう。
のび太が、何気なくそのカメラでドラえもんを写すと、カメラからドラえもんの人形が出てくる。
のび太はパパとママも写し、3人の人形をしずかにあげる。
しずかはさらに、隣に住むガン子に人形をあげてしまう。
ガン子はジャイ子と、その人形を使ってお医者さんごっこを始める。
熱があると言って、パパとママの人形を冷蔵庫に入れるガン子。
すると、パパとママは寒くてたまらなくなる。
実は、のろいのカメラで写してできた人形に何かすると、その作用が本人にそのまま伝わってしまうのだ……。
(てんとう虫コミックス4巻)
人形を焼くと、本体も焼かれる(やけどを負う)。
対象人物の髪の毛を入れた藁人形に五寸釘を打って、対象を殺そうとする呪いと同じ。藁人形の絶対確実バージョン。
このカメラが現代にあったら、ストーカーの被害者は大変な目にあうだろう。
ガン子とジャイ子が、お医者さんごっこの中で悪気なく人形にひどいことをするのが、子どもが持つ無邪気な悪が垣間見える感じで、地味に怖い。
皆に無視される「石ころぼうし」
マンガを読んでいると叱られるのび太。
何をしても、他人が気にしないようになれないかというのび太に、ドラえもんは「石ころぼうし」を出す。
これをかぶると、道ばたの石のように、だれからも気にされなくなる。
確かに、ジャイアンたちにいたずらしても全く気づかれない。
そんな中、バッターボックスにジャイアンと一緒に立ったのび太が、珍しくヒットを打つ。
だが、皆はジャイアンがヒットを打ったと認識し、だれものび太に気づかない。
のび太は帽子を脱ごうとするが、帽子は脱げない……。
(てんとう虫コミックス4巻)
そこにいるのに、だれからも気づかれない。
「怖い話」という観点での怖さではないが、自分がここに存在していることに、だれも気づかなくなったらさぞかし怖いだろう。
ブログを書いても書いてもだれからも認識されない。これは実際に私の身に起こっていることである。
タイムパラドックス「ドラえもんだらけ」
ドラ焼きのかわりに、のび太の宿題をやるはめになったドラえもん。
その夜、ドラえもんはのび太の部屋で宿題をやり、のび太は他の部屋で寝た。
朝になり見に行くと、部屋は散らかり、ドラえもんはボロボロに傷ついている。
何が起きたか知るため、タイムマシンで昨晩に戻り、押入れに隠れるのび太。
すると、ドラえもんが2時間後、4時間後、6時間後、8時間後の自分をタイムマシンで連れてきて、皆で宿題をやろうとする。
だが、未来のドラえもんはみな傷だらけで、後の時間になるほど、たくさん傷を負っている…。
(てんとう虫コミックス5巻)
現在の自分がいる空間に、未来の自分が何人もいる。
未来の自分に現在の自分を助けてもらう、いいアイディアにも思えるが、もとは同じ自分なのに、利害関係があり自分同士で争ったりする様子が少し怖くて面白い。
夢が現実になる「うつつまくら」
二学期の開始日に、朝早く目覚め、夏休みの宿題もすべて終えているのび太。
ドラえもんが「これは夢だ」と言ったとたん、ドラえもんに起こされて、のび太は夢からさめる。
現実は、夏休み最後の日で、宿題は全く終わっていなかった。
怒るのび太に、ドラえもんは「うつつまくら」を出す。
さっきの夢に戻るが、宿題が終わっていることで皆が大げさな反応をするため嫌になり、夢からさめる。
そしてドラえもんに、皆から尊敬される夢を見せてくれと頼むが……。
(てんとう虫コミックス5巻)
夢の世界が自分にとっての現実になる。
一見いいように思えるが、夢が現実よりもひどかったら、元も子もない。
あと、夢が現実になる場合、現実世界で夢を見ている自分はどこにいってしまうんだろう。
意識は夢の中にあるとして、現実世界で眠っている身体はどういう扱いになるのか。夢の中にも身体はあるし。
突然変異を作り出す「人間製造機」
ドラえもんがのび太に「部屋にある機械に絶対触るな」と言って、出かけてしまう。
その機械は「人間製造機」だった。
石けん1個(脂肪)、釘1本(鉄分)、マッチ100本(リン)、鉛筆450本(炭素)、石灰1杯(カルシウム)、硫黄少量、マグネシウム少量、水1.8リットルという、身近にある材料から人間を作り出せる機械だ。
未来デパートの社員が機械を回収に来るが、のび太はごまかして帰らせる。
のび太が材料を揃えて人間を作り始めると、ドラえもんが帰ってくる。
人間製造機は未来デパートが回収したとのび太が嘘をつくと、ドラえもんは話し始める。
人間製造機は、恐ろしい欠陥があったため、発売中止となったことを。
この道具で作られる人間はミュータント(突然変異)であり、凶暴な性格で超能力を持っている。
未来の世界では、ミュータントが仲間を増やして人類を支配しようとし、国連軍まで出動したという…。
(てんとう虫コミックス8巻)
人間が人間を、しかも突然変異を作り出せる。
具体的な材料が、子ども心に「これを集めたら本当に人間が作れるの?」と思わせ、人間を製造することにワクワクしてしまった思い出。科学者の気持ちが分かる。
ミュータントは見た目も怖いが、のび太にテレパシーで「ミルクもってこい」と命令するところが、「恐ろしい存在なのに、ミルク飲みたいんだ…」と思えて、ちょっと笑える。
またこの回では、しずかちゃんに「二人で一緒に赤ちゃんを作らない?」と提案するのび太も見られる。
悪いことを許される「悪魔のパスポート」
マンガが欲しいのび太は、ママに小遣いの前借りをお願いするが断られる。さらに、勝手に借りようとして、激しく叱られる。
のび太はヤケになり、悪者になろうと決意してドラえもんのポケットに手をつっこむ。
出てきたのは、どんな悪いことをしても見せれば許される「悪魔のパスポート」。
ドラえもんは返すように迫るが、パスポートを見せられて許してしまう。
のび太は、ママの財布からお金を盗み、ジャイアンを殴り、しずかのスカートをめくり、ついには欲しかったマンガを盗んで、悪事に歯止めがかからなくなっていく……。
(てんとう虫コミックス13巻)
どんな悪いことをしても許されるので、歯止めが効かなくなる。
現代なら、このパスポートが欲しい人は結構多いかもしれない。
この道具は怖いけど、この話自体は、人間の良心とは何かをのび太の視点で考えるいい話になっている。
家に帰れなくなる「家がだんだん遠くなる」
部屋にあったダンゴを食べてしまったのび太。
そのダンゴは「すて犬ダンゴ」といい、ペットを捨てる時に二度と家に帰ってこないように食べさせるダンゴだった。
ドラえもんはのび太に家から出ないように言うが、のび太はうっかり外に出てしまう。
家に戻ろうとするが、すぐ目の前なのに様々な障害が起こり、どんどん家から遠くなっていく……。
(てんとう虫コミックス14巻)
ダンゴを食べると、二度と家に帰れなくなる。
捨てたいペットに食べさせると二度と家に帰ってこれないという、残酷な道具。
ちょっとちがうが、姥捨て山を思い出させる話で、高齢化社会にもしこのダンゴがあったらと思うと怖くなる。
同じ時空間に自分が2人いる「無人島へ家出」
両親とドラえもんに叱られたのび太は、家出を決意する。
ドラえもんを気絶させ、ポケットから道具を持ち出して、タケコプターで無人島を見つける。
手あたり次第に持ってきた道具は、無人島では役に立たないものばかり。
水を飲もうとして「モグラ手ぶくろ」で穴を掘るが、海水しか出てこない。
島を出ようとするが、ミスでタケコプターだけ飛ばしてしまい、島から出られなくなる。
さすと雨が降る傘を使い、実がなる木を地面にめり込ませて、水と食料を確保したのび太は、ドラえもんの助けを待つ。
1ヶ月、1年、3年、5年たってもドラえもんは現れない…。
(てんとう虫コミックス14巻)
同じ時空間に、現在無人島にいる自分と、未来から来た自分が2人いる。
このコミックス以降、マンガ読んだり昼寝したりしているのび太とは別に、無人島で助けを待つのび太が常に存在している恐ろしさ。
最後まで読まないと怖さが分からないので、ぜひ読んでみてください。
他人を思いのまま消せる「どくさいスイッチ」
のび太はドラえもんに、ジャイアンさえいなければ殴られないのにと言う。
すると、ドラえもんは「どくさいスイッチ」を出す。
それは、未来の世界の独裁者が、邪魔な人間を消すのに使う道具。
のび太は使用をためらうが、再びジャイアンに殴られ、はずみでスイッチを押してしまう。
この世界から消えるジャイアン。消された人間は、最初から存在しなかったことになる。
さらに、皆にバカにされる夢を見たのび太は、「だれもかれも消えちまえ」と寝言を言ってスイッチを押してしまう。
世界から、のび太以外の人間が消えてしまった……。
(てんとう虫コミックス15巻)
嫌いな人や、邪魔だと思う人を、思いのまま消すことができる。
邪魔な人を消していくと、突き詰めれば自分以外は全部消すことにつながるという、人間の恐ろしさ。
「かんたんだろ。じゃまものは消してしまえ。すみごこちのいい世界にしようじゃないか」という、黒いドラえもんのセリフが微妙に怖い。
この話は、内容ゆえに単行本化するかどうか出版社が悩んだという噂があるが、無事収録されている。
モノが無限に増殖する「バイバイン」
栗まんじゅうを食べてもなくならない方法について考えるのび太。
ドラえもんは、「増やしたまんじゅうを残さないこと」を条件に、「バイバイン」を貸してくれる。
「バイバイン」とは、物にかけると、5分ごとに2乗倍、つまり5分で2個、10分で4個、15分で8個…と増やすことができる液体である。
最初は喜んでいたのび太だが、増えるにつれ食べきれなくなり、友人に食べさせてもどうしても1個余ってしまう。
のび太は、余った1個をゴミ箱に捨ててしまった。
すると、みるみるうちに栗まんじゅうは増えていき……。
(てんとう虫コミックス17巻)
モノがすごいスピードで無限増殖する、ネズミ算。
いまもどこかで栗まんじゅうが増殖しているのかと思うと怖くなる。
家から出られなくなる「ホームメイロ」
家を迷路のように広くしたいと言い出すのび太。
ドラえもんが出した道具「ホームメイロ」は、回すと空間が捻じ曲がり、家が迷路のような空間になる。
調子に乗ったのび太は、ホームメイロを回し過ぎてしまい、家は巨大な迷路と化す。
外への出口を探すが見つからない。元に戻したくても、ホームメイロがある部屋にも戻れない……。
(てんとう虫コミックス18巻)
家が迷路になって、出られなくなる。
地味だけど、例えばトイレのドアが開かなくなったり、ベランダのドアを内から閉められて出られなくなる怖さを考えると、家が異空間迷路になって、出られないし助けも来ることができないというのは、相当怖いと思う。
生きたまま石にされる「ゴルゴンの首」
廊下に立たされても、足が疲れない道具を出してほしいと頼むのび太。
ドラえもんが出したのは「ゴルゴンの首」。
箱に入った蛇の石像の目から出る光線は、生き物の筋肉をこわばらせて、石のように動けなくする。
足は疲れなくなったが、タケコプターで移動中に、のび太はゴルゴンの首を裏山に落としてしまう。
ゴルゴンの首は、速度は遅いが自ら移動することができ、学校の先生、スネ夫、そしてドラえもんまでが石にされてしまう……。
(てんとう虫コミックス20巻)
光線を浴びると、生きたまま石にされてしまう。
ギリシア神話に登場する、ゴルゴン三姉妹のメドゥーサの首が元になっている。
メドゥーサの髪の毛は無数の毒蛇で、見たものを石に変える能力を持つ。
ゴルゴンの首は、ラーメンの出前箱のような箱に蛇が入っているが、見た目も無機質で怖いし、箱を開けた時の不気味な咆哮もまた怖い。
ちなみに、メドゥーサは映画「のび太の魔界大冒険」にも出てくるが、そちらも怖い。
髪の毛はたくさんの毒蛇だし、赤い目に痩せ衰えた幽霊のような身体、しかもタイムマシンの時空を遡って、のび太たちを追いかけてくるのだ。
自分が縮んで消える「デビルカード」
のび太はお金欲しさに押入れを調べると、一枚の紙が出てきた。
広げると悪魔が現れ、のび太に「デビルカード」を渡した。
それは、1回振ると300円出てくるが、代償にその日の午前0時に身長が1ミリ減るカードだった。
調子に乗ったのび太はかなりカードを使ってしまい、次の日には自分で分かるほど背が縮んでしまった。
もうカードを使わないと決意するが、ジャイアンが壊した物の弁償金をなりゆきで出したり、のび太がカードを使うのを見たパパが、真似して大量にお金を出してしまう。
使ったお金の総額を計算すると、午前0時にのび太が消えてなくなる金額に達していた…。
(てんとう虫コミックス22巻)
小銭が積み重なって、自分が縮んで消えてしまう。
300円という小銭の額は、子どもにも大人にも魅惑的だ。
1回1ミリなら、のび太でなくても「少しなら大丈夫」と、自分がなくなるほどの金額を使ってしまうかもしれない。
それは、ギャンブルやサラ金の心理にも似ているかもしれない。
また、午前0時にその日に使った分だけ縮むというのが、妙にリアリティを感じさせて怖かった。
心の痛みを感じなくなる「ヘソリンガスでしあわせに」
嫌なことが続くのび太に、ドラえもんが「ヘソリンスタンド」を出してくれる。
このガスをへそから注入すると、心や体の痛みを感じなくなる。
殴られても痛がらないのび太を見て、不思議に思うジャイアンとスネ夫。
効き目がある時間(30分)がたち、帰宅してガスを注入するのび太を見て、ジャイアンとスネ夫はヘソリンスタンドを横取りしてしまう。
噂を聞いた子供たちが押し寄せ、ガスの注入にお金を取り始めるジャイアンたち……。
(てんとう虫コミックス25巻)
ガスを吸うと、心も身体も痛みを感じなくなる。
痛みを感じなくなるガスを売るという構図は、覚せい剤の販売のようで怖い。
だけど、私もこれほしいです。
ただ、痛みを感じない昆虫は、直前まで死の危険性を理解できないように、痛みは危険を認識するためにある。
脳梗塞時に頭痛が起きなければ、脳梗塞だと気づかないで死んでしまうということ。
だから痛みは、心と身体の両方において、必要悪なのかもしれない。
不幸の訪れがカウントダウンされる「しあわせトランプの恐怖」
のび太は部屋でトランプを見つけ、しずかとババ抜きがしたいと思った。
すると、なぜかしずかがやってきて、ババ抜きをすることができた。
だが、トランプを終えた時、スペードのエースがなくなっていた。
帰ってきたドラえもんにその話をすると、ドラえもんは仰天した。
そのトランプは「しあわせトランプ」と言い、願いがかなうたびに一枚ずつ減っていって、最後にジョーカーが残った時、今までの反動で物凄い不幸が訪れる代物だった。
しかも、捨てても必ず持ち主のところに戻ってくるのだ。
のび太は困るが、たまたま訪れたスネ夫が話を聞き、トランプを持って帰る。
スネ夫は願いをかなえると、「願いをかなえたら、僕のように他人にあげればいい」と助言して、ジャイアンにトランプを譲る。
以降、友人たちは願いをかなえたら他の人にトランプを譲り、トランプは枚数を減らしつつ移動していく。
友人たちが願いをかなえた話を聞いたのび太は、「自分も願いをかなえてから、人にあげればよかった」と後悔し、トランプを取り戻しにいく。
だが、取り戻した時には、既にトランプは残り2枚になっていた……。
(てんとう虫コミックス27巻)
願いをかなえるトランプが、願いがかなうたび一枚ずつ減っていって、最後の一枚になった時不幸が訪れる。
一枚ずつ減っていくため、不幸がやってくるのがカウントダウンされているように感じるところが怖い。
異次元空間から帰れなくなる「地平線テープ」
地平線を見たことがないのび太は、ドラえもんに地平線を出してくれと頼む。
ドラえもんが出したのは「地平線テープ」。
部屋のすみにテープを貼ると、壁が消えて地平線が現れた。
地平線が広がる空間に入り込み、しずかたちと楽しく過ごすのび太。
その後、ママに叱られたのび太たちは、地平線の空間に逃げ込むが、ママがはずみで部屋のテープをはがしてしまう。
異次元の空間から部屋につながっていた出口がなくなり、帰れなくなるのび太たち……。
(てんとう虫コミックス28巻)
異次元空間の入り口がなくなって、元の空間に帰れなくなる。
バミューダトライアングルのように、異次元空間に入り込んで消滅してしまうという話は個人的にトラウマ。
普通に生きていても、ちょっとした空間の歪みに入り込んで戻れなくなる、または同じところをぐるぐるさまようという話は、実際に起こりそうで怖い。
世界が終わる予言「大予言・地球の滅びる日」
昼なのに暗い、変な天気の日、ドラえもんは出かけている。
のび太は、部屋で一冊の本を見つける。各ページには何かを暗示するような短い詩が書かれている。
スネ夫が、この本は「ノストラダムスの大予言」とよく似ていると指摘する。
確かに、1ページ目を今年の正月としてカウントすると、各ページに書かれている謎の詩は、その日に起きた出来事と一致するのだ。
そして、最後の200ページ目に書かれている「暗き天にマ女は怒り狂う この日○終わり悲しきかな!!」とは、今日地球が滅亡するという意味なのではと推測する……。
(てんとう虫コミックス36巻)
暗示的な詩が実は、世界の終わりを告げる予言であった。
子どもの時、ノストラダムスの大予言を初めて知った日は、眠れなかった。
この世界が終るかもしれないという恐怖。
暗示的な詩のため、どうとでも解釈できるところが、恐怖の源でもあり、魅力でもある。
古典的な幽霊「しかしユーレイはでた!」
ジャイアンのおじさんが住職を務める山寺に、のび太たちは泊まりにいくことになった。
そこは、冬にはバスも通らなくなる山奥で、しかもその晩おじさんは不在であった。寺には5人だけ。
就寝後、どこからか悲鳴が聞こえ、のび太はしずかやドラえもんと一緒に様子を見に行く。ジャイアンはいない。
その悲鳴が、のび太をおどかそうとするジャイアンの仕業だと思ったスネ夫は、自分ものび太たちを驚かすために床を出る。
ジャイアンとスネ夫が帰ってこないまま、また悲鳴が聞こえる。しずかとドラえもんは、再度様子を見に行く。
だれも帰ってこないまま、再び響き渡る悲鳴。
一人で震えるのび太を目指して、だんだん足音が近づいてくる……。
(てんとう虫コミックス37巻)
山奥の古寺で、深夜、悲鳴とともに一人ずつ消えていく。
やっぱり、古典的な怖い話は怖い。
報復が止まらない「ペンシル・ミサイルと自動しかえしレーダー」
ジャイアンにいじめられたのび太は、いつでも手軽に仕返しできる道具をドラえもんにせがむ。
ドラえもんが出したのは「ペンシルミサイル」。
セットすれば、ボタンを押すだけで攻撃できる道具だ。
さっそくジャイアンを攻撃したのび太は、さらに大量のミサイルを設置したいと思い、昼寝するドラえもんのポケットからミサイルを取り出しセットする。
のび太を怪しんだジャイアンとスネ夫は、のび太の家の庭からミサイルを盗み、裏山にセットし返す……。
(ドラえもんプラス5巻)
攻撃されたら倍返し、といった具合に、互いの報復合戦が止まらない。
まさに冷戦を揶揄した話である。
いわゆる「怖い話」ではないが、やられたら倍返しという人間心理が垣間見える。
(上記以外にも、単行本に唯一収録されなかったという噂がある「バラバラボタン」という話と、幻の回と話題になっている「タレント」という話があるが、どちらも藤子・F・不二雄先生の話か疑わしいので、ここでは扱わなかった。 特に「タレント」は、ネット上の創作話の寄せ集めである。)