ニャート

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サムの息子法でも防げない、ネットで殺人手記を公開する凶悪犯罪者たち -酒鬼薔薇聖斗「絶歌」の波紋

自らが犯した凶悪犯罪について語りたがる犯罪者たちがいる。

最近では、神戸市須磨区で起きた「神戸連続児童殺傷事件」の加害者、酒鬼薔薇聖斗が出版した手記「絶歌」が話題になっている。

「絶歌」は、初版10万部でその後5万部増刷され、酒鬼薔薇聖斗に入る印税は2000万円と予想されている。

異常性のある殺人事件を犯す。
未成年のため少年法に守られ、本名を明かすことなく有名になる。
カリスマ性を得て、事件の詳細を公開して、金を手に入れる。

一種のビジネスモデルにもなりそうなこの流れを阻止できる法律が、アメリカにはある。「サムの息子法」だ。

「サムの息子法」とは? その由来

「サムの息子法」とは、犯罪加害者が、自らの犯罪手記を出版することで印税収入を得ることを規制する法律である。
1977年に、アメリカニューヨーク州で制定された。
英語では「Son of Sam law」という。

「サムの息子」という名前は、1976~77年に6人を殺害し8人に重軽傷を負わせたデビッド・バーコウィッツが、マスコミや警察に送った手紙の中で自ら名乗った名前に由来している。
神戸連続児童殺傷事件で、少年Aが「酒鬼薔薇聖斗」と名乗ったように。

6回目の犯行時には、犯行現場にこのようなメッセージを残している。

おれはモンスターだ。
おれは「サムの息子」だ。ちっちゃな「悪ガキ」だ。
親父のサムは酔っぱらうと手がつけられない。家族をぶん殴るんだ。ときにはおれを家の裏にしばりつけたりもする。車庫に閉じこめることもある。サムは血を飲むのが大好きなんだ。
「外で人を殺してこい」と親父が命令するんだ。(略)

引用元:サムの息子

その1ヶ月後、バーコウィッツは「デイリー・ニュース」紙に、犯罪を予告するような手紙を送っている。
デイリー・ニュース社は、この手紙を何日にも分けて一部分ずつ掲載し、1日で最高110万部もの売上を上げた。

バーコウィッツは結局、この手紙の筆跡がもとで捕まってしまう。
彼は近所の犬がうるさいと、飼い主に抗議の手紙を書いたり、あげくには家に火炎瓶を投げ込んだりしていた。
たまたま飼い主側が警察に相談し、手紙の筆跡が一緒であることが判明したのだ。

そして、飼い主の名は「サム・カー」だった。
サムの息子=サムの犬、バーコウィッツはなぜか、うるさいと抗議していた犬を名乗っていたのだ。

ニューヨーク州には死刑がないため、バーコウィッツは懲役365年の刑を受け、現在も服役している。

「サムの息子」の逮捕後、犯行中の手紙を掲載した新聞がすごい売上だったことから、出版社数社が彼に、多額の報酬を提示して手記を書くよう依頼した。
その商業行為に批判が殺到し、サムの息子法は制定された。

ネットで殺人手記を公開する犯罪者たち

だが、サムの息子法にも抜け道がある。

それは、殺人犯がインターネット上で殺人手記を公開することである。

アラバマ州では、ジャック・トローウィックという死刑囚が、被害者女性を殴って首を絞め殺したことなどについて、インターネット上に公開している。
文中には、被害者の母親を名指しで嘲笑っているような部分さえある。
これは、本人がネットにアップロードしたのではなく、トローウィックを崇拝する文通相手によって公開されたのだ。
(有名になった凶悪殺人犯に憧れて、文通や獄中結婚を申し込んだりする層が、アメリカには一定数存在する)

アメリカでは数十人の死刑囚が、インターネット上に凶悪事件について述べた手紙や絵を公開している。

だが、被害者がそのサイトに対して講じられる手段はほとんどない

市民的自由連盟(ACLU)の弁護士フェティグ氏によると、犯罪者の手紙は言論の自由のもとで保護され、危険につながらない限り外部への送付を阻止することはできないという。

日本では、刑務所から送付される手紙は検閲されるため、このようなことはできないと思いたい。

まとめ

アメリカの死刑囚が手紙に殺人の詳細を書くのは、裏に「俺はこんなすごいことをやってのけたんだ」という承認欲求がある。
そして、死刑囚を崇拝して文通し、手紙をネットにアップロードまでする支持者のように、その承認欲求をもてはやす者たちがいる。

酒鬼薔薇の場合も、同じ構図に思える。
承認欲求が強い犯罪者と、それをもてはやし利用する周囲

被害者の遺族は、「元少年Aや出版社の人たちと同じ土俵に立ちたくない」と述べている。

本を買うことは、酒鬼薔薇が持つ承認欲求の土俵に立つ行為だ。
買う人がいなければ、彼に印税も入らず、2冊目を出す話もなくなる。

掲示板の荒らしと同じで、騒がなければ消えてしまうのだ。

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