洗わない玄米に豆乳を混ぜ、常温で発酵させて作る自家製ヨーグルトがある。しかも、それが過敏性大腸症候群に効くとうたわれている。
私は、過敏性大腸症候群に悩む一人として、食中毒などはないのか、その危険性をまとめたい。
豆乳グルグル(TGG)ヨーグルトとは
豆乳グルグルヨーグルトとは、玄米と豆乳から作るヨーグルトだ。
牛乳(動物性乳酸菌)は入っておらず、植物性乳酸菌でできている。
作り方は簡単にいうと、「洗わない無農薬玄米に無調整豆乳を混ぜ、常温で2日ほど保存」。
なくなったら、「玄米に豆乳を継ぎ足し、また常温保存」で繰り返し作れる。
※「豆乳グルグルヨーグルト」と、玄米が入っていない「豆乳ヨーグルト」は別物。
2011年頃から流行りはじめ、2015年夏には書籍化し、TBS「あさチャン」で取り上げられ、Facebookの研究会には何千人も参加している。
豆乳グルグルヨーグルトの危険性
人気の豆乳グルグルヨーグルトだが、何度か危険性を指摘されている。
その菌、大丈夫!? 玄米豆乳ヨーグルトの自家製ブームにちょっと待った!! - Togetterまとめ
問題点をまとめてみる。
- 乳酸菌ではなく、雑菌が入って腐っている(過発酵)のでは?
- 乳酸菌ではなく、酵母による発酵なのでは?
乳酸菌ではなく、雑菌が入って腐っている(過発酵)のでは?
動物性乳酸菌(牛乳)と植物性乳酸菌(玄米)の発酵のちがい
まず、そもそもなぜ、「牛乳」は固まってヨーグルトになるのか。
乳に含まれる乳酸菌が、糖を分解する
↓↓
乳酸ができる(乳酸発酵)
↓↓
乳に含まれるカゼイン(タンパク質)が固まる
↓↓
ヨーグルトになる
「牛乳」には、動物性乳酸菌が入っているので、ヨーグルトになる。
だが、豆乳には乳酸菌が入っていない。
だから、洗っていない玄米(米の籾に植物性乳酸菌が入っていると言われる ※確かなソースが確認できない←2月1日追記)を入れる。
ここで、動物性乳酸菌と植物性乳酸菌の発酵のちがいについて、下のサイトから引用する。
40℃前後の牛乳は、乳酸菌にとって 適切な生育環境であるが、同時に他の雑菌・たとえば黄色ブドウ球菌にとっても好ましい環境なのだ。
牛乳のpHは当初、弱酸性の6.5程度である。
よーいどん! で発酵を開始した瞬間、このときは乳酸菌もブドウ球菌も同じ条件で一斉に増殖を始めている。
しかし乳酸菌が出す「乳酸」によってpHは どんどん酸性に傾き、それがちょうど 牛乳の酸凝固点・pH4.6に到達した時点で、ブドウ球菌のほうは増殖できなくなり、増殖できないからには、結果として死滅する。
一方乳酸菌はそれでもかまわず どんどん増殖を続け、かなりすっぱいpH4.2に到達してもまだ増殖している。
そうして 保存食・ヨーグルトが出来上がる。
問題はこの「酸凝固点pH4.6」に到達するまでの時間だ。ここに到達しないと、腐敗菌は止められない。
最終的に酸凝固していたとしても、それまでに時間がかかりすぎていれば、ブドウ球菌を含む腐敗菌も「その時点までは増殖してから→死滅した」ということであり、発酵も起きているが腐敗も起きているかもしれない。
理想的なヨーグルト製造では、発酵開始からpH4.6の酸凝固点に到達するのに6~7時間程度である。
しかし、14時間経過してもpH4.7前後 であったということは、もし雑菌が入っていたら腐敗していたかもしれないということである。
pH(ペーハー)とは、水素イオン濃度のこと。
pH7.0が中性で、これより低ければ酸性、高ければアルカリ性。
上の場合、pH4.2~4.7なら酸性で、数字が小さい方が酸性度が高い。
引用部分を簡単にまとめると、「pH4.6の酸凝固点到達までに7時間以上かかった場合、雑菌が入っていたら腐ってしまうかもしれない」ということになる。
上記のサイトでは、牛乳(もともと動物性乳酸菌が入っている)に、ラブレ(植物性乳酸菌)を加え、湯せん45度で14時間発酵させて、やっとpH4.3に達している。
こんなに大事なことなのに、豆乳グルグルヨーグルトでは、pHも測らず、発酵時間の記述もアバウトである。
http://ameblo.jp/mitsulow/entry-11493980346.html - ウェブ魚拓
上は、豆乳グルグルヨーグルトの提唱者のサイトだが、そもそも36度で9時間発酵なので、雑菌が入っていたら腐ってしまう(過発酵)可能性もある。
さらに、手洗いや道具の煮沸消毒、蓋を閉めるなど、雑菌を入れないようにする注意は特にない。
素人が、衛生に特に注意しないで菌を扱うと、乳酸菌ではなく雑菌の温床を作り出してしまいがちである。
論文のデータベースで検索すると、過去にも、自家製のケフィア(ヨーグルトきのこ)で食道真菌症や肝機能障害を起こした被害報告があり、これも雑菌が原因ではないだろうか。
乳酸菌ではなく、酵母による発酵なのでは?
酵母とは、カビやキノコ等を含む「真菌類」であり、代表格がイースト菌だ。
パン生地が膨らんだり、ビールやワインが発酵するのは、酵母のおかげである。
酵母が体にいいかどうかは、アフィリエイトサイト以外にははっきりした根拠が見当たらなかった。
体内に吸収される時は、アミノ酸に分解されるので、言ってみればただのアミノ酸である。
玄米からの豆乳ヨーグルトづくりについて注意 : 豆乳ヨーグルトの効果と作り方
上のサイトが指摘している危険性を、簡単にまとめた。
- 豆乳グルグルヨーグルトの発酵は、天然酵母パンの発酵に極めて似ている
- 「泡が出てピリピリするほどよい」というが、これは酵母発酵による現象の可能性が強い
- 玄米に付着している酵母の正体が分からない限り、安全とは言えない
- 天然酵母には、カンジダ菌が入っているという情報を耳にしたことがある
- もしカンジダ菌が入っているなら、加熱しないで食べるのは心配
普通のヨーグルトで、泡がぶくぶく出ているヨーグルトなど聞いたことがない。
横から見ると、かなり泡が発生しているのがわかります。
すごい。
こんなのはこれまでのどのヨーグルト作りでも見たことがありません。
一方、酵母の発酵過程では二酸化炭素が出るため、非常に泡が発生する。
水槽に入れる二酸化炭素ボンベの代用品が作れるほどだ。
まとめ
ここまでまとめてきたが、やはり、素人が管理されていない環境で菌を扱うことは、何の菌が入るか分からない危険性と恐怖を感じる。
さらに、このヨーグルトを提唱している人も、風変りな人のようだ。
玄米に付着した微生物が、「悪」になるか「善」になるかは、作り手(観測主体)のあなたの気持ち次第です。
小さき者たちは、思考という波(振動)に大きく影響を受けますので、出来ると思えば、出来ます。
疑えば、失敗します。
また、豆乳グルグルヨーグルトの出版元が「検査機関で調べてみると、食中毒の危険性は皆無です」と言い切っているのも、逆に気になる。
通常、「不衛生な環境で作った場合、雑菌が入る可能性がある」程度に逃げ道を作っておくものである。
ヨーグルトなどの健康食品には、効果ばかりを求めてしまいがちだ。
だが、食べ物を体内に入れる上で何よりも大切なのは「食べたことで健康を損ねない」ことだ。
玄米豆乳ヨーグルトのように、テレビや雑誌で取り上げられれば、お墨付きの健康食品だと思ってしまう人もいるだろう。
健康になりたいから買った(作った)食品で、不健康になってしまう。こんな悲しいことはない。
そうならないように、メディアで取り上げられたものを頭から信じ込んでしまうのは、いい加減にやめたい。