あるTV番組の「『お疲れさん』と言いながら肩をもむのはセクハラか」というテーマで、女性弁護士が「一般論としてはダメ(個別に承諾があるかがポイント)」と述べつつも、「福山雅治さんなら(私は)OKです」と笑いを取った件がプチ炎上していた。
職場では「イケメンならセクハラOK」ではない
しかし、職場のセクハラに関しては、セクハラを構成する要素はもっと複雑だ。
職場におけるセクハラとは、(1)職場において行われる性的な言動に対する労働者の対応により、当該労働者がその労働条件につき不利益を受けること(2)職場において行われる性的な言動により労働者の就業環境が害されること、を意味する(男女雇用機会均等法11条)。
職場における、セクハラやパワハラなどのハラスメントの本質は、
「仕事」なので、「断るのが難しい」そして「断ったかどうかで仕事の評価が変わる」
もっと言うと、
本来、「仕事」は単なる契約に過ぎないのに、日本では「仕事において、理不尽なことを強いられた時、労働者が断ることが難しい」
という点にあるのではないか、と私は思う。
つまり、職場においては、
「イケメンならセクハラOK」ではなく、イケメンのセクハラを断れないという「状況」がハラスメント
ではないだろうか。
職場におけるセクハラは、加害者の容姿に左右される問題ではない。
「仕事だから我慢しろ」がハラスメントを生み出す
仮に、私がテレ朝の女性記者で、福田次官が100%好みの男性だったとしよう。
そんなことに関係なく、下記の理由でこれはセクハラである。
- 職場(労働者が業務を遂行する場所・接待や取材先も含む)で行われた性的な言動
- どう対応するかで、労働者側が不利益を受ける
加えて、労働者側は下記の理不尽にも晒されている。
- 夜中(残業または勤務時間外)に呼び出されても、取引先との関係を保つために、断るのが難しい
- セクハラされても、取引先との関係を保つために、断るのが難しい
- 断れずにセクハラをされた場合、同情はおろか「女は得している」と言われ、その後仕事に対する『正当な評価』を受けることはない
つまり、
- 長時間労働 または 勤務時間外の労働 そして それらを必須とする業務内容
- ハラスメント
- 仕事の評価基準
について理不尽なことがあっても、労働者側は断るのが難しいのが現状ではないか。
断れば「仕事だから我慢しろ」「我慢できない奴は無能」と一蹴される。こうした、
- 仕事だから、どんな理不尽も我慢しなければならない
- 理不尽を我慢できるかどうかで、仕事の評価が変わる
という「たかが仕事に、全人格を捧げることを強いられる、日本企業の風土」が、ハラスメントを生み出しているのではないだろうか。
さらに言えば、下記のように
- 上司にセクハラを訴えても、取引先との関係悪化と報復(特オチ)を恐れて、何もしてくれない
- 正当防衛のための録音やリークが、有識者からも非難される
- 被害者であるのに、国から「名乗り出ろ(=個人情報を明らかにせよ)」と言われる
- ハニートラップ等、いわれのない非難を受ける
労働者はセクハラを拒否できないばかりか、被害後も一方的に非難される状況で、どうすればよいのだろうか。
こうした状況をリアルタイムで目にして、日本が「働き方改革」に取り組んでいて、実は「女性が輝く社会」を目指しているなどと信じられるだろうか。
自ら「名乗り出ろ」と強制し、被害者を守るどころか圧力をかけているような国が。
性別関係なく、一人の人間として働きたい
冒頭の女性弁護士のように「イケメンだからOK」ではなく、イケメンだろうが何であろうが、仕事とその評価に、性別や性的な要素が入ってくるのは一切ごめんだ。
性別関係なく、一人の人間として働きたい。
純粋に、仕事の能力と成果だけで評価してほしい、というのは、労働者のごく普通の願いではないのか。
日本政府が、働き方改革に「真に」取り組むつもりなら、
- 労働者が、仕事上の理不尽を拒否できるような法整備や環境改善
- 年齢や性別関係なく、仕事の能力と成果で評価される評価基準や社会風土の実現
が必須ではないだろうか。
(ブログ更新が止まっていましたが、その間、母がアルツハイマーだと確定したり、父が倒れたり、自身のパニック障害がひどくなったりといろいろありました。いまも鉛のように体が重いけど、とりあえずこの記事だけでも書けてよかったです。またそのうちにゃ)