ニャート

出版社を過労で退職→ひきこもり→非正規雇用を経て、社会のあり方について思うことを書いています。

社会に居場所がない側から、hagexさんの事件を思う

はてなブロガーとして、あまりに衝撃的な事件が起きた。
被害者と加害者が互いを認識し、加害者が犯行声明(未確定)を残したのが、「はてな」のサービス内だったという事件だ。

福岡刺殺事件の詳細

6月24日20時ごろ、福岡市の起業家支援施設(大名小跡地)で、セミナー終了後に講師が、トイレで男に背中や胸、首などを何度も刺されて死亡した。

刺殺された岡本さん、「Hagex」の名でブログ

事件当時、施設管理者が「救急車を呼んでくれ」という声を聞いてトイレに向かうと、血だらけの岡本さんと、松本容疑者が出てきた。管理者が追いかけたが、松本容疑者は自転車で逃走。約3時間後、福岡市東区内の交番に出頭し、「人を刺した」と話したという。バッグの中に血のついたナイフを持っており、県警が事情を聴いていた。

ITセミナー講師死亡 逮捕の男 背中や胸を何度も刺したか

セミナー詳細
ネットウォッチ勉強会「かもめ」#2「100万PVブログ達成への道」「ブログトラブル110番」

被害者は、はてなの有名ブロガー(ネットウォッチャー)hagexさんと言われている。

hagexさんのブログ
Hagex-day.info

「低能先生」と呼ばれていた人

hagexさんは、下記の記事も書いたことがあるので、事件報道当初はそれが原因かと言われていたが、事実はちがった。

hagex.hatenadiary.jp

「はてな匿名ダイアリー」(完全な匿名で書き込み可。国会で取り上げられた「保育園落ちた日本死ね」もここが発祥の地。通称:増田)に、容疑者の犯行声明と思われる書き込み(未確定)が掲載されている。

http://archive.is/AFT0C(魚拓)

容疑者は、はてな界隈で「低能先生」(以下Aさん)と呼ばれていた人ではないかと言われている(未確定)。

Aさんは、「はてなブックマーク」で某プロブロガーなどを批判するコメントを書いたユーザー複数に、「IDコール」(ユーザーのIDを書くと、相手に通知が飛ぶシステム)を飛ばして「低能」と誹謗中傷していたことから、「低能先生」と呼ばれていた。

仮に容疑者がAさんならば、hagexさんの下記の記事が原因で犯行に及んだのではと推測されている(未確定)。

低能先生に対するはてなの対応が迅速でビックリ

(注:hagexさんがAさんを「低能先生」と名づけたのではない)

二人は、リアルでは全く面識がなかった。

さらに、「はてな匿名ダイアリー」でAさんは犯行を煽られたのでは(未確定)、という推測もされている。

https://archive.is/zrVlO(魚拓)

f:id:nyaaat:20180625200537p:plain

画像の対話を、分かりやすく書き換える。

安倍botや低能先生の存在を放置する株式会社はてな
どうなんだろうな

そらネットでの発言の場所が奪われたらリアルで行動を始めるからだろうなw
まあお前はそっちをお望みなんだろうが
俺もネット弁慶は卒業すべきと考えている

? お前みたいなカスがリアルで行動できるわけないだろ

低能の願望どおりには世の中動かないんやでw

じゃあ行動してみろよ早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く

おいネット弁慶卒業してきたぞ…(前述の犯行声明に続く)

Aさんの人となりが分かるコメントを一つ引用する。

「罵倒コメはひどいが定文コピペではなくちゃんと一人ずつ内容変えて罵倒する律義さはすごい」というブコメを過去に書いたときにスターつけてきたことを思い出す。そのよくわからない律義さゆえの犯行声明なのか。

http://b.hatena.ne.jp/entry/366388936/comment/Kil

私はこの事件を知った時、近年なかったほど動揺した。

hagexさんと直接の親交はなかったが、はてなブックマークに上がった記事はほとんど読んでいた。
同じまとめでも、ソースをきちんとあたり、普通のブロガーでは気づかない細かな部分までまとめ尽くし、仕事ぶりが非常に丁寧だった。

hagexさんはブログを書かなければ、死なずに済んだのだ……。

憤りとやり切れなさで苦しい反面、私は容疑者のことも思った。

社会に対する憎悪や居場所の無いいたたまれなさを、殺人に転化する以外に、道はなかったのか。

容疑者は、hagexさん一人を狙っていたのではないと思う。
たまたま自分の生活圏にやってきたのがhagexさんだっただけなのだろう。

ブロガーの一人として思うこと

私はこの事件に関連して、ある事件を思った。

ブロガーのBさんが、ブログ等で公開していた情報から「うつ病患者らしくない」と匿名掲示板で攻撃され、個人情報を晒された結果、ブログを閉鎖した事件だ。

以前から、Bさんが複数の人に批判されていたことを知っていた。
擁護しようと思ったが、いろいろ考えてやめた。
そして、Bさんのブログは消えてしまった。

私は何もできなかったことを悔やんだ。
それで、個人名を出さずに2つ記事を書いた。
しかし、結果から言うと、それはやるべきではなかった。

このように、ある人やある立場を立てると、自分が意図せずとも、どんなに気をつけても、反対の立場の人を傷つけることがある。

Bさんのこと以外でも、私の存在が気に入らず、完全にネットから、のみならずリアルからも消し去りたいと思っている人は、それなりにいる。

匿名掲示板でBさんを攻撃した人たちも、ブログ閉鎖だけでは満足せず、Bさんの障害年金自体を止めようとしている。

ネットの匿名攻撃は、リアルにつながっているのだ。

社会に居場所がない一人として思うこと

ブロガーとしての私は、上記のように思う。

だけど、社会に居場所がない側の私としては、Bさんを攻撃したり、不特定多数を「低能」と攻撃したりすることでしか、生きられない人の存在も知っている。

誤解を恐れずに言うなら、自分では止められない領域に入っているのだと思う。

Aさんと思われる書き込みから引用する。

なんだかんだ言ってはてなというか増田が俺をネット弁慶のままで食い止めていた面もあるしなあ
逆に言うと散々ガス抜きさせてもらった恩がある

前述の、律儀さに言及されてスター(いいね)をつけたことから考えても、他人から認められることに飢えていたのかもしれない。
不特定多数を攻撃して目立つことでしか、承認を得られなかったのかもしれない。

さらに、著名プロブロガーを批判するユーザーをAさんが攻撃していたことも、複雑な気持ちになる。
プロブロガーは、オンラインサロンや情報商材を商売とする一面があり、Aさんは彼の信者だったのか、それで何か救われたのか、と考えてしまう。

匿名で他人を攻撃することはたやすく楽しい。
攻撃は叩きやすい人に向かい、Bさんの事件のように、弱者と弱者で潰し合うのを散々見てきた。

では、どうすればよいのか。

システム面の対策としては、はてなは「匿名ダイアリー」含む自社サービスの利用登録を、電話番号必須にした方がいい。
5ちゃんねるなどの匿名掲示板も、書き込みに電話番号登録が必要になってほしい。
いっそ法律で定めてほしい。
そうすれば、匿名による誹謗中傷は減るはずだ。

しかしそうすると、引用コメントのように「ガス抜き」できなくなるという声があるかもしれない。

「ガス抜き」は、他人を攻撃することでしかできないのか?
お互い承認しあうことで「ガス抜き」できる場、というのは作れないのか?

今回の容疑者が、42歳(就職氷河期世代)・無職・ひきこもりだからといって、レッテルを貼ってほしくない。
「普通の人とはちがうから」と、遠ざけて隔離してほしくない。
それは逆効果だ。

そうではなく、社会に居場所がない人を承認する場は作れないのか?
日本社会にはびこる、「稼げる」人にしか価値がない、という考え方は覆せないのか?

社会に無視された人たちが、ネットの個人攻撃でしか「ガス抜き」できず、それがエスカレートしていく現象について、真剣に対策を考える時が来ているのではないだろうか。

(私個人にできそうなのは、他人を批判したり悪口を言ったりすることを禁止する「ほめるSNS」等の場を作ることくらいだ…)

最後に、この記事を書くか迷ったが、心に深く残ったことについて書かずにいられない業深いブロガーとして、書くことでhagexさんの死を自分に焼きつけて、hagexさんが生きていたことを忘れたくないと思った。
この事件があまりに衝撃で、昨夜は眠れずにひたすら新情報を探し求めていた。ブロガーとして受けた衝撃は、同様に感じた人の文章を読んだり書いたりすることでしか埋められないし、hagexさんを追悼できなかった。

ご冥福をお祈りいたします。

【追記】
私はこの事件を一生忘れません。

「はてな」という、自分の活動場所で起こった事件だからこそ、なぜこんなことが起こったのか、どうしたら防げるのか(未来形)を常に考え続けて、実践につなげたいのです。そういう覚悟で書いています。

しかし、この事件をブログで扱うかどうかは意見が分かれる所なので、批判を受けるのは覚悟しています。

続き
誹謗中傷でしか他人とつながれない|匿名掲示板という「負のつながり」の場