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ニャート

旧「一橋を出てニートになりました」。出版社を過労で退職→引きこもり→派遣社員を経て、働き方や社会のあり方について思うことを書いています。

生きづらい人々の受け皿がプロブロガーしかない問題

「4ヶ月で大学を中退し起業します。レールに沿ったつまらない人生はもう嫌だ。」 という記事が、批判を受けている。

批判を受けている理由は、この部分に集約されているように思える。

探していると、ブログでお金を稼げることや実際に何百万も稼いでいる人がいることを知り、
「ブログで月商100万稼げる?大学生で100万稼いでいたらすごくないか?」
これなら自分にもできそうだと思いました。

あと、この学生さんが、はてなで有名な八木氏の率いる有料ブログサロンに入っているから、という理由もある。
八木氏は、ブログで月60万円を稼ぎ、月2700円~4320円+イベント参加費でサロン生に教えている(*一部訂正しました。文末参照)
そのため、「レールを降りたのではなく、もっと劣悪なレールに乗りかえただけでは?」と批判されている。

本題からずれるかもしれないが、「レールを外れたい」または「意図せずレールを外れた」人々の受け皿がプロブロガーくらいしかないことこそが問題だと思うので、今日はその話をしたい。

会社員の2人に1人は、同じ会社に一生勤める

厚生労働省「平成26年度版 労働経済の分析 第3章第1節 我が国における職業キャリアの現状」によると、日本人の転職回数は非常に少ない。

生涯の転職回数

男性は、一般的な定年年齢まで、約半数が「転職回数ゼロ」である。
転職する人も1回か2回で、3回以上は10%以下である。

これは、私の体感と一致する。
大学のサークル仲間の中で、転職経験のある人は1人しかいない。
その1人も、民間企業を3年経験した後に公務員になるという、就活時から決めていたプランに従っただけだ。
彼は、その転職について「周りのみんなは転職しないから、(周りから見たら)冒険だしリスキーな選択だよね」と言っていた。
ある会社で、人事担当者が「転職を3回もしているジョブホッパーには、うちみたいな会社を受ける資格はない」と言っているのを偶然聞いたこともある。

日本社会には、こういう傾向があるように思える。

  • 会社員の2人に1人は、同じ会社に一生勤める
  • つまり、大半の人は、18~22歳という若さで、残りの人生の方向性が決まる
  • そのため、「レールを外れた人生」については、異端として見られる

意図せずレールを外れた後の人生

転職を想定していない社会では、失敗ができない。
会社がブラックでも、次を思うとなかなか辞められない。
ストレスがたまり、他人の失敗(転職が多いなど)も許容できなくなる。

こうした「失敗が許されない社会」では、1度病気にでもなると、二度とレールには戻れない。
私は、出版社を過労で退職したが、病気によるブランクがあるため、その後は正規雇用の仕事には一度も就けていない。

派遣のような非正規雇用は期限があるので、転職回数ばかりが増えていく。
以前、派遣の面接で(違法だが、「職場見学」という名の抜け道があり、法が形骸化している)、「経歴が3社以上あるのは問題だね」と言われた。
その会社に採用はされたが、「長く勤めてほしい」と言われていたのに、その部署の管轄が日本から海外に変わって、海外からの「翻訳はいらない」という電話1本で切られることが決まった。
あなたたちみたいな会社が存在しているから、経歴が増えるんです。
そうしてどんどん条件が悪くなり、非正規スパイラルを下りながら回っていく。

レールにはもう乗れない。
かといって、自分のレールを作ることも難しい。

私にはやりたいことができた。
ブログのこれから、私のこれから」で書いたように、生きづらさを抱える人たち(非正規・引きこもり・障害者など)を支援する人々や、人生に挫折した人のその後の生き方を取材して紹介することで、「挫折した後の生き方ライフハック」を作りたい
そのために、3月末で派遣社員をやめることにした。

だが、怖い。
最初の出版社を病気でやめた時とは、比較にならないほど怖い。
例えば、次に病気再発などの失敗があれば、人生の一発退場もありうる。
失うものが少ない人の方が自由というのは嘘だ。
少ないからこそ、その一つ一つが手放せずに、縛られる。

私のように、ポンコツになってから自分のレールを作るのは、全くおすすめできない。
なぜなら、日本のセーフティネットは、ずっと同じ会社に勤め続けることを前提に作られているから、レールを外れた人の存在は想定しておらず、そういった人々の受け皿がないからだ。

だから、自分のレールを作りたいなら、やり直しがきく20代のうちが絶対いい。

自分のレールを作りたい人の受け皿が、怪しいレールしかないことが問題

だが、このような社会なので、自分のレールを作りたい人の受け皿も少ない。
冒頭の記事についてのコメントを引用する。

40年前ならヒッピー、30年前なら新興宗教、20年前ならマルチ商法、10年前ならバックパッカーやってたような層が2016年にやるのがブログで起業なんだろな

先ほど言ったように、大半の人は、18~22歳で人生が決まる傾向がある。
その若さでは、アルバイトやインターン以外に、働いた経験はないだろう。
働いたこともないのに、その後の仕事人生を決められるのか?
そのことに疑問を感じるのは、自然なことだと思う。
疑問を感じる人がたくさんいるから、新興宗教などがなくならないのだろう。

問題は、「レールに乗った人生」を疑問に思う人の受け皿が、別の怪しいレールしかないことではないか?

生きづらい人々が、怪しいレールしか選べない悲しさ

怪しいレールかどうかは、そのレールに乗ることで支払う「金」で決まる。

「簡単に儲かる仕事があります。でも、人をだましたり、法外な値段でモノを売ったりします。やりますか?」

プロブロガーたちは、表に出ている部分をみる限り、人をだましたりはしていない。
だが、中には1時間14,000円でブログコンサルをやっている人もいるので、ブログサロンに入る人は、彼らの真意を自分なりに見極める必要がある。

見ていて悲しいのは、プロブロガーの顧客の中に、病気などで挫折した生きづらい人々がいることだ。
別に調べているわけでもないのに、ちらほら見かけるので、割合はかなり多いのだと思う。

気持ちはすごい分かる。
例えば、心の病で私のようにポンコツになった場合、これからどう生きていいのかサッパリ分からないし、モデルケースも受け皿もない。
そんな時に、自宅で簡単に稼げる仕事といわれたら、きっと飛びつく。
さらに、ブログコンサルでちょっと親身になってもらえたら、コロッといってしまうだろう。
私も、引きこもり時代に彼らに出会っていたら、きっと信者になっていた。
そうした自分の絶望と孤独が、また悲しい。

これは、八木氏が別の文脈でいった言葉(影=批判する人々)なのだが、象徴的なので貼る。
光が八木氏で、影が生きづらい人々という構図がある。
彼が作ったように見えるレールも、イケダハヤト氏などが作ったレールのテンプレで、彼自身が作った新しい価値はまだない。
(ただ、彼はまだ若いので、これから新しい何かを生み出していく可能性はある)
それでも、生きづらい人々の受け皿があまりにないので、人々は群がってきてしまう。

(八木氏がキャンピングカーを買ったことは、それがたとえ情報商材のマニュアルにある「儲かってることの証明」であっても、面白いと思った。もし彼が、キャンピングカーで全国を旅して、アフィリ・サロン以外の新しい生き方を地方で模索する人々を取材したり、自分もその輪に加わったりしたら、私の評価は変わるだろう)

プロブロガーにお願いがあります。
あなたたちは今、結果的に、生きづらい人々の光になっているようです。
だからそのまま、適正な価格を逸脱しないでください。

大人たちにもお願いがあります。
転職3回で異端とみられる社会は、寛容ではありません。
やりたいことを試行錯誤する若者を叩くだけではなく、より良いやり方やセーフティネットなどのヒントを与えてあげてください。こんなふうに。
社会という大きな海に小さな小舟で出て行く若者について思うこと

私は私で、4月以降に「挫折した後の生き方ライフハック」(無料)と病んだ人が体調のいい時に分業しあえる仕組み(無料・具体案はまだない…)を作って、生きづらい人々の手助けになれるよう、自分のできることを頑張ります。

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仕事で挫折した人に差しのべられるべき手とは

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*八木氏から、依頼をいただいたので訂正します。
・サロンの収益は全体の1/4以下(3/4はブログからの収益)
・出会い系アフィリエイトの収益は全体の1/20
・サロンでは、ブログのみで生計を立てることを推奨していない