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出版社を過労で退職→ひきこもり→非正規雇用を経て、社会のあり方について思うことを書いています。

氷河期世代がアジアに出稼ぎにいく日

政府が、単純労働を含む外国人労働者の受け入れを拡大するために、出入国管理法改正案を閣議決定した。

入管法改正案を閣議決定 単純労働で外国人受け入れへ :日本経済新聞

これに対して、「人手不足なら氷河期世代を雇え」という意見が出ている。

政府「人手不足なので外国人移民解禁」に「ロスジェネを雇え!」の大合唱〜「日本語話すよ」「教育レベル高いよ」「労働意欲も高いよ」「棄民するな」「公務員に」「慰謝料」 - Togetter

今日は、このことについて考えてみたい。

氷河期世代の人件費を削減して、日本企業は生き延びた

就職氷河期世代には、1993年卒〜2005年卒が含まれる。

「失われた20年」を振り返ると、氷河期世代を非正規雇用にし、人件費を削減することで、日本企業は倒産を免れてきたと、個人的には思う。

もっとストレートにいうと、「氷河期世代を捨てて、日本企業は生き延びた」。

この結果、日本企業は生き延びたが、日本社会は少子高齢化になった。

氷河期世代は「団塊ジュニア」とかぶっているため人口は多いが、貧しいため子どもを持つことができなかったからだ。

日本の競争力低下は、氷河期世代に教育コストをかけなかったから

また、この点はあまり指摘されないが、日本の競争力が低下しているのは、企業が氷河期世代に教育コストをかけなかったからではないか、と個人的に考えている。

これもあまり指摘されないが、非正規雇用の大きな問題点には「人材に教育コストをかけない」点が含まれる。

例えば、正社員には一人ひとり育成計画があり、定期的に無料で研修が受けられる。
英語力が必要なら、無料で(企業負担で)英会話研修が受けられ、研修時間も勤務時間に含まれ(給料がもらえる)、留学させてもらえることすらある。

派遣社員が語学力を伸ばしたいと思った場合、費用はすべて自己負担になる。
同じ職場で同じ仕事でも、正社員と同じ英会話研修が受けられることはない。

「非正規雇用=使い捨て」なので、人材は育たず、技術やノウハウが蓄積されない。

日本全体として競争力が低下するのは当然だ。

「国際協力の推進」という名のもとに、時給300円で残業させる「技能実習制度」

さて、外国人労働者の受け入れ問題だが、その前に「技能実習制度」の現状に触れる必要がある。

「技能実習制度」とは、外国人の技能実習生が、出身国では習得が難しい技術や知識を学ぶために、企業などに雇用される制度だ。農業や建設、縫製など、職種は定められている。

だが、この制度は悪用されていて、国内だけでなく、例えば米国国務省の人身取引報告書など、国際社会からも指摘が絶えない。

最近のニュースでは、ベトナム人の技能実習生に時給300〜550円で残業させていた縫製業2社。

ベトナム実習生 時給300~550円で残業させる 縫製業2社を送検 唐津労基署・北大阪労基署|労働新聞ニュース|労働新聞社

これは氷山の一角にすぎず、厚生労働省による2017年の調査では、実習を行う企業のうち70.8%が、労働基準関係法令を違反している。

外国人技能実習生の実習実施者に対する平成29年の監督指導、送検等の状況を公表します

私はこの制度の問題点ばかり聞いていたので、技能実習制度の目的が、実は「国際協力の推進」であると知って驚いた。

外国人技能実習制度とは | 外国人技能実習制度の円滑な運営を支援 | JITCO - 公益財団法人 国際研修協力機構

「日本企業は、綺麗事の裏で、制度を悪用するのが得意だな」と思った。

派遣法でも、事前面接は禁止されているのに、「職場見学」という名の派遣社員側を思いやったようなキレイな言葉の裏で、選考面接が行われている(違法)のと同じ構造だ。

技能実習法には「技能実習は、労働力の需給の調整の手段として行われてはならない」と明記されているが、この法には法的拘束力がない……。

「人材に金をかけたくない」という企業の本音を政府が後押し

「技能実習制度」の現状から痛いほど伝わってくるのが、徹底して「人材に金をかけたくない」という企業の本音だ。

とにかく安く、長時間働かせたい。最低賃金すら守りたくない。

企業が、(外国人に比べれば賃金がかかる)氷河期世代の雇用よりも、外国人労働者の受け入れを希望するのは当然だろう。

さらに悪いことには、そうした企業の本音を、政府が後押ししていることである。

日本は、アジアの中で賃金が安い国になりつつある

冒頭で、「氷河期世代の人件費を削減することで、日本企業は生き延びた」と述べた。

日本企業は再び、本来発生する人件費を「外国人労働者受け入れ」で削減して、同じことを繰り返そうとしている。

その結果、個々の企業は生き延びるだろう。

しかし、氷河期世代を棄民することで、少子高齢化は訪れた。

今度は、本来は日本人に還元されるはずだった給料(人件費)が社会に回らず、日本社会は徐々に貧しくなっていくだろう。
人材は育たず、技術も蓄積されず、日本の競争力は落ちていくだろう。

外国人受け入れを決めた政治家や経団連のお偉方は知らないのだ。

日本が、アジアの中で賃金が安い国になりつつあることを。

最近も、日本の料理人が、マカオのレストランに転職したことで年収が4倍になったという話が話題になっていたばかりだ。

マカオ転職で給料4倍! このままでは日本の賃金が危ない! (1/3) - ITmedia ビジネスオンライン

だから、外国人受け入れを決めても、賃金の安い日本には外国人が来ない未来もある。

氷河期世代が、アジアに出稼ぎにいく日も近いのかもしれない。*


「ひきこもり新聞」2018年10月号の2面に、寄稿させていただきました。
www.hikikomori-news.com

就職氷河期世代どうしを分かつ自己責任論

※アジアを軽視しているのではありません。むしろ、氷河期世代は積極的にアジアに出るべきと思います。 (11/5 19:40 追記 / 20:55 打ち消し線)