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ニャート

旧「一橋を出てニートになりました」。出版社を過労で退職→引きこもり→派遣社員を経て、働き方や社会のあり方について思うことを書いています。

「ぼーっとしている人が『自分の人生と向き合う』ためのQ&A30」のココが面白い

今日は、人気の電子書籍の書評と、おまけチラ裏「もし私が、この本を一般書籍化する編集者なら、こうしたい」 という回。

対象の本は、この記事で人生相談に乗っていただいた、はてなの人気ブロガー斗比主閲子さんid:topisyu 以下topisyuさん)の「ぼーっとしている人が『自分の人生と向き合う』ためのQ&A30」

「ぼーっとしている人が『自分の人生と向き合う』ためのQ&A30」のココが面白い

この本は、出版後3ヶ月で3,000部売れている。
出版社の宣伝なしで、個人が電子書籍を短期間に3,000部も売ったことは、スゴいの一言である。

topisyuさんのTwitterのフォロワー数は約3,000人、はてなブログ読者登録数は約1,500人。
SNSの人気発信者が本を出すと、多くの場合 フォロワー数>>部数 となるが、topisyuさんは逆である。
つまり、作者の既存の読者枠を超えて、この本は売れているのだ。

この本は、下記のどれかに当てはまる人がターゲットである。

  • 一年以上不倫をしていていつか結婚できると信じている人
  • 結婚さえすれば幸せになれると思っている人
  • 待っていればいつか仕事も人間関係も上手くいくと考えている人
  • 嫌いな友達や家族が多い人
  • 親はいつまでも健在だと信じている人

つまり、「人生をぼーっと生きている人」が対象だ。
上記の人に対応したQ&Aがそれぞれ設けられている。
Q&Aは「人間関係」「男女」「心理」「仕事とお金」に分けられ、計30個。
シチュエーションも、行きたくない結婚式の対処方法、セクハラ上司に飲み会に誘われた時の断り方、「お子さんはまだ?」と聞かれた時の受け答え方など、非常に具体的だ。

各Q&Aの要約が並んだ「目次」がおもしろい。
質問は少し長めの文章だが、回答はほぼ一行で端的である。特にこの2つが印象的。

Q16.「どうしても窮地に追いやりたい人がいるのですが、どうしたらいいでしょうか?」
A16.「お勧めしません」

(中略)

Q21.「周りの友達はバカばかり。どうして自分はこんなに友達に恵まれていないのだろう?」
A21.「あなたがバカだからです」

目次は一刀両断だが、実際の回答はすごく懇切丁寧だ。
上記のQ21に対しても、きちんとフォローがされている。

これまでは別に不満はなかった友達との会話に、違和感を覚えてきているということは、あなた(の心)が今の交友関係から脱する準備をし始めたと解釈できます。

一般的に、友達に対して「バカばかり」と思うことは批判を受けそうだが、ここでは成長の兆しと捉えている。
現状に不満を抱くことは、単なるネガティブ発想ではなく、次のステップに対して助走を始めた状態でもあるのだ。

また、topisyuさんらしい優しさも、回答の随所に感じる。
例えば、仲が良いママ友が、デモを誘ってきたり予防接種を受けるなと言ってきたりすることに戸惑っているという質問がある。
普通の人だと「徐々に距離を置きましょう」と答えがちだが、この本では下記のように答えている。

反論をしたくなったり、説得をしたくなったりする気持ちも分からなくもないですが、そういうママ友へのお勧めの行動としては、そのママ友が抱えている不安にできるだけ寄り添ってあげることです。

以降、この理由が丁寧に説明されている。
こうした寄り添いの姿勢は他にも、嫌いな人にこそ好意を示すようにと回答するなど、全編にわたって貫かれている。

ぼーっとしている人が対象だが、セクハラ・パワハラ・男友達に襲われる・DV・不倫・不妊治療・マルチ商法など、扱っている範囲が非常に広い。
もちろん、「彼氏/彼女いない歴=年齢です。どうしたら恋人ができますか?」などの王道Q&Aや、会話が盛り上がらない、周りにイライラするなどの、誰もが感じる苛立ちや不安への回答もある。
子どもの名づけで義理の両親と揉めない方法、親が生きているうちに相続の話を切り出す方法、子どもが料理人になりたいと言った時の対応方法など、実際に家庭を持っているからこそ書ける視点からの回答も魅力的だ。

そして、それぞれの回答が具体的で役に立つ
50,000字超えのボリュームでたった300円。
ぼーっとしていて人生のことを何も考えていなかった人、役立つ人生相談を読みたい人はぜひ。

おまけチラ裏「もし私が、この本を一般書籍化する編集者なら、こうしたい」

この本のターゲットは「人生をぼーっと生きている人」なので、一般書籍化するなら「より分かりやすく、読みやすい本」にしたいなと思う。
そのためには、(月並みだけど)こうしたい。

  • 質問部分を、エピソードつきのマンガにする
  • topisyuさんの「一刀両断ぶり」の面白さが伝わるような工夫をする
  • (活字が苦手な人のために)回答の冒頭に、ポイントを入れる

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*topisyuさんのブログヘッダーのイラストを使わせていただきました

このようにすると(良くも悪くも)印象が変わるのだが、ふだん活字をあまり読まないであろう「ぼーっとしている人」に売るためには、レイアウトとイラストを工夫するというのもアリかなと思う。

さらに、回答の「一刀両断ぶり」が伝わるようなキャラのビジュアルを(失礼ながら)自由に考えてみた。

  • 実写
  • なまはげのお面をかぶっている
  • 和装
  • 回答時の「喝!」で、なたを振り回すなど独特のポージング
  • ホワイトボード で回答
  • 背景で映る部屋の家具が豪華

…あれ、おかしいな。
topisyuさんのトレードマークである「なまはげ」に引っ張られて、「クール」「知的」な面が感じられないな……。
私が過去に本を編集した時には、条件だけ指定してプロのイラストレーターさんに考えていただいていた。困った時はプロに頼ろう。

以上、書評とチラ裏でした。

せんでん

小学館さんの「P+D Magazine」に寄稿しました。
「ダメ人間の作家や主人公と自分を比べる」「社会の中でニートの自分を相対化する」の2つの視点から、本を20冊セレクトしています。
石川啄木や野口英世など、一般的には偉人として知られる人のダメ人間ぶりが描かれた本や、ブラックな社会を告発する本など、普段あまり見ない本を取り上げています。

pdmagazine.jp