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パニック障害で退職→ひきこもり→非正規雇用の氷河期世代。だめ人間が何とか日常を投げずに生きていくためのメモ書き。

「ぶさいく」の書き込みが名誉毀損罪? ネットの誹謗中傷の事例・判例

ネットの書き込みが「名誉毀損罪」「誹謗中傷」にあたると認定され、個人情報の開示請求が認められるレベルはどの程度なのか。

最近のはてなでの、名誉毀損による削除依頼事例

2015年7月、はてなブログでこんな小事件があった。

はてなブログ運営からAさんに、Bさん・Cさんの名誉毀損・侮辱をしたため、該当記事の削除を依頼するメールが来た
↓↓
Aさんが、そのメールをブログで公開

1週間以内に自主的に削除ないし連絡しないと、はてな運営がAさんのブログをプライベートモード(非表示)にする等の防止措置が取られるらしい。

はてなブックマークを使ってみると分かるが、サイトをブックマークする時に書けるコメントには、過激な表現が使われているものが多い。
Aさんの記事も、はてなのブックマーク文化に慣れていない人から見たら、少し驚くような内容だったが、「(批判の)文才すごい」「いつもより丁寧な愛ある批判」という賞賛のブックマークコメントで溢れていた。

だが今回調べると、はてな運営がけっこう削除依頼をしていることも分かった。
さらに「はてな匿名ダイアリー」(増田)も、2014年9月に削除の対応方針を新しくしている。
はてな匿名ダイアリーへの投稿に関する削除の対応方針を追加しました - Hatelabo Developer Blog

言及された当事者から削除の申し立てがあった場合、発信者への意見照会を経ずに削除を行う

そして、悪質なユーザーに対しては、

はてラボおよびはてな全体のサービス利用停止措置などの対象とし、別のアカウントを取得しての再利用もお断りします。

だそうだ。

近年、だれでもブログやtwitterなどで発信できるようになったからか、名誉棄損や誹謗中傷で訴えられるレベルが低くなってきているので、簡単にまとめてみた。

ネットの書き込みに関する、名誉毀損罪・誹謗中傷の最近の判例

名誉毀損で訴訟を起こされているというと、すぐ浮かぶのが2ちゃんねるである。
http://2ch対策.net/

訴訟を起こしているのは、圧倒的に企業・有名人が多い。

2009年には、はてなブックマークのコメントに対する訴訟で、株式会社はてなが敗訴し、コメントを書いた発信者の情報が開示された判例がある。
はてなブックマーク訴訟 司法が発信者情報開示を認めたネガティブブックマークコメントを調べてみた:Birth of Blues

最近だと2014年1月に、ツイッターで中傷された男性が、中傷者の接続者情報開示を東京地裁に請求し、認められるとその情報を元に、さらにプロバイダーに中傷者の個人情報開示の請求を起こし、それも認められた判例がある。
中傷ツイート投稿者情報を開示命令 | web R25

さらには、2013年9月には、中傷記事を転載しただけでも名誉棄損にあたるという東京高裁の判例がある。
問題のケースでは、「Yahoo!掲示板」の中傷記事を2ちゃんねるに転載していた。
これは、地裁判決では「名誉毀損にならない」として請求は却下されていたが、高裁判決では一転、名誉毀損として認められた判例である。
中傷記事「転載しただけ」でも名誉毀損に 東京高裁が初認定 安易な「転載・まとめ」に警鐘 - ねとらぼ

たとえ事実が真実でも、誹謗中傷は「名誉毀損罪」「侮辱罪」

誹謗中傷は、「名誉毀損罪」「侮辱罪」にあたる。

「名誉毀損罪」は、刑法によると、「公然と事実を適示し、人の名誉を毀損すること」が成立条件である。

詳しく言うと、「不特定多数の人が認識できる状態で、人・法人の具体的な事実を適示することで、社会的評価を侵害すること」である。
簡単に言うと、「ネットに、ある人や企業の社会的評価が下がるような事実を書き込むこと」は、これに該当する。

この「事実」だが、これはその事実が真実か嘘かを問わない。
つまり、真実を書いても、それである人の社会的評価が下がるなら、名誉毀損罪は成立する。
よく、「これは真実に対する批判だから、そんなことをする方が悪い」と思いがちだが、たとえ真実だろうが名誉毀損罪は適用される。

(ただし、「公人」(公務員・選挙の候補者・議員など)に対する真実の告発は、「真実性の証明による免責」とされ、名誉毀損にはあたらない)

「侮辱罪」は、人の人格を蔑視するような価値判断の提示を指し、こちらは具体的な事実ではなく抽象的な事実でも成立する。
例えば、先ほどのtwitterでの「ぶさいく」は、侮辱罪にあたる。

どちらも親告罪なので、名誉毀損された方が訴える必要がある。

ネットで名誉毀損されたら、慰謝料+調査費用まで請求できる?

で、名誉毀損の裁判を起こした場合、慰謝料は取れても上限100万円である。
だが、裁判のためには、まず名誉毀損した相手の特定に数十万円、さらに弁護士費用などで数十万円かかるため、赤字になることの方が多く、個人の場合は訴訟の敷居が高かった。

だが、2012年1月に、ネット上の中傷に対して慰謝料、弁護士費用(慰謝料の1割)の他に、調査費用を請求する訴えが起こり、東京地裁が調査費用全額の請求を認めた判例もある。

地裁によっては、調査費用を認めない判例もあるが、ネット上の名誉毀損は多いため、時代的には誹謗中傷された方が訴えやすいように変化しているようだ。

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